好きになったキミへ





「財前、お前2年のくせに調子乗りすぎなんだよ」

ピアス5個、2年でテニス部のレギュラー。
これらの様々な理由から
俺は、昔から年上の人によく目をつけられていた。

「すんません」

いつも謝るだけで、ピアスを外すつもりも、
テニスを辞めるつもりもないんやけど。

「てめえは毎回謝るだけやろ」

その声が聞こえたと同時に、壁にぶつかった。
正面から思い切り蹴られたんか、と数秒後理解した。

俺はしばらく壁に凭れる。

「怖くて声も出なくなったん?」

「黙って言うこと聞けばいいねん」

「うっさいすわ。アンタらの言うこと聞くわけないやろ」

今まで思ってたことをボソっと呟くと、
相手の先輩達はとうとう本気で怒ったらしく
俺に殴りかかってきた。


「これに懲りたら、もう調子こいたマネするんやないで」

散々俺を痛めつけ、気が晴れたのか先輩達は去っていく。
俺は、口元を触ってみた。

「…ッ、血か…」

黙って血を眺める。
もうこんなのも慣れた。

「ホンマ、アホやろ」

あの先輩達も、俺も。


俺は中学校に入ってから、あまり人を信じなくなっていた。
1人で居たほうが楽やし。

しかも、俺と一緒に居る人にまで暴力が及ぶかもしれへんし。
これでいいねん。


ふぅーっと溜息をつき、時計を見ると
もうすぐ部活が始まる時刻になっていた。

「部活、行かんと」


立ちあがったとき、後ろから声が聞こえる。


「財前っー…!!」


「謙也さん」


部活の先輩だった。

「さっき、友達から、財前が連れて行かれたって聞いてな」

「ちょっと前に終わりましたわ」

「…そか。スマンな、もっと早く来れれば」

「何で、アンタが謝るん?関係ないやろ」

「ダブルスのペアやもん、関係あるで?」

「アホらし」

「でもな、俺結構財前のこと、好きやで」

「アンタ、バカやないですか」

そんな馬鹿のこと言ってニコッと笑うこの人は
俺のダブルスのペアの先輩だ。

初めて会ったときから目立っていた。
金髪で、いつも笑っていて。


「うっさいでー?ちゅーか、ほら」

ハンカチを手渡される。
仕方なく受け取ると謙也さんはまた笑った。

「すんません」

「ええで。今日は白石達に勝とうなー」

「謙也さん、頑張って走りまわってや」


謙也さんは俺の頭をポンっと叩いて
俺の前を歩いて行った。




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