次の日、俺は学校に着いてずっと机に伏せていた。
「謙也、おはよ」
白石が俺の身体をポンっと叩いてくる。
俺は顔を上げ出来るだけ笑顔をみせる。
「あー…、白石…、おはよ」
「謙也、昨日財布忘れとったで」
俺の目の前に財布を出す。
一瞬、びっくりした。
忘れるとか、ないやろ。
「あ、ホンマに?」
「持ってきてたの忘れてたんか?」
「そうみたいやー」
「ホンマ、謙也しっかりせえや」
「…おん」
返事をしたのと同時だった。
「謙也さん」
聞き覚えのある低い声。
「財前…」
「ちょっとええですか」
「あ…えっと」
「白石部長、ちょっと謙也さん借りるんで」
「…ええで」
財前が俺の教室に入ってきて手を引っ張っていく。
「ざ、財前?」
「…黙ってや」
連れてこられたのは空き教室。
サボりでよく利用される教室だった。
「財前…」
「謙也さん、昨日何なん?財布忘れたとか言うて机の上にあるし」
「それは…」
「…避けてるやろ?」
「違うねん…、あのな…っ」
何を言ったらいいのか分からん。
白石が財前のことを好きなんだって?
俺は財前も白石もどっちも大事だからどうしたら良いか分かんない?
でもやっぱり一番言いたいのは…聞きたいのは、
――俺は財前が好き。でも、財前は俺なんかでええの?
「何すか、はよ言って」
「財前のことは大好きなんや…!」
そう告げて俺は財前の横を通り過ぎる。
もう、どうしたらええか分からん。
涙流れてくるとかありえへん。
教室に戻ると白石がやってくるが
俺は聞こえないふりをして自分の席に着く。
やっぱり、ずっと伏せたままで。
授業なんか何も聞いてへんし、
放課後は、部活も休み、帰ることにした。
―――……。
「白石部長。話ってなんすか」
「あのな、財前…」
「…え?」
俺は学校から帰っても制服のままベッドに横になったままだった。
だけど、部活が終わった頃に携帯が震えた。
着信 : 財前光
どうしようか迷ったが通話ボタンを押す。
「謙也さん」
「ざいぜ、ん?」
「…今から行ってええですか」
「は…?」
「行きますんで。覚悟しとって」
そういうと通話が途絶える。
「何なん…」
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