「怒っ!?…ちゃうねんっ」
つい大声を出してしまった。
白石がこちらを見る。
「…声でかっ。なら今日一緒に帰れますよね」
白石のほうを見ると少し悲しそうな表情をしていた。
「えっとー…今日は」
「善哉食いに行くって言ってたやないですか」
「あ、そうなんやけど…、俺財布忘れてきてもうて」
本当は持ってきてるんやけど。
今の俺にはそう言うしか考えられへんかった。
「そうなんすか?なら俺払いますんで」
「…後輩に奢らせるなんて駄目や、せやからまた今度、な?」
「…嫌っすわ」
「スマン…。俺、今日…見たいテレビあるから、ほな、お疲れ」
俺は急いで鞄と学ランを持って部室を飛び出す。
部室の机の上に財布を忘れたことに気づかずに。
「…謙也さん、どないしたんやろ」
「んー…」
「あれ、コレ」
「謙也の財布、やな」
「忘れたって言うたやんか…」
「…せやな」
―…しばらく走ったところで俺は止まる。
「財前を避けてまう…」
白石と財前がお似合いなのが嫌。
でも、財前と付き合っているのは俺なのに。
「俺はどうしたらええの…」
俺は財前が好きで、…凄く好きなのに、
何でこんなに上手くいかないん?
財前が好きで、白石は親友やから、大事。
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