俺でええの? *
「なあ、謙也。俺財前のことが好きなん。せやから、あまり財前と話さんでや」
部活の休憩中、親友の白石蔵ノ介にそう告げられた俺は戸惑った。
何でかって言うと、俺は財前と付き合ってる。
男同士やから、ずっと隠してたんやけど。
ちゅうか、白石と財前がくっついたとしても男同士やないか。
「あの、な白石」
「まあ、そういうことやから。よろしゅうな」
白石はテニスコートに向かっていく。
言うタイミングもなく、でも頷きもせず俺はその場に立ち尽くす。
「謙也さん?」
休憩をするために財前が俺の隣に来る。
「あ、えっあー…財前っ」
「何すか。そないに驚いて。しかも、いつも以上にアホ面になってますやん」
「あ、いや、ちゃうねん、ホンマすまん!」
俺は呼ばれてもいないのに空いているテニスコートに全力疾走で向かった。
…白石と財前。
テニス部部長、頭脳明晰、容姿端麗。とにかく完璧な白石。
財前も2年生にしてレギュラー、頭も良いしクールで、顔もかっこいい。
…何や、二人お似合いやんか。
部活終了後、俺は部室に向かった。
そこにはすでに白石と財前がいた。
「なあ、財前、サーブとか全体的にめっちゃ上手くなったなー」
「そうでもないっすわ」
「今日、俺負けそうやったし」
「白石部長にはまだ勝てないっすわ」
「まあ、簡単には勝たせへんけど」
白石は凄く楽しそう。
財前も、白石にテニス褒められて嬉しそうやし。
俺は2人が話している横を通り過ぎる。
「謙也さん、お疲れ様です」
「謙也、お疲れ」
「ぁあ、おん、お疲れさん」
俺は声のする方に顔を向けず2人にそう言う。
お似合いの2人を見るのが嫌だった。
ゆっくりと着替えていると財前が来る。
そして耳元に小声で呟く。
「謙也さん…何か、怒ってはります?」
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