ライバルは従兄弟? *
夏休みも半ばのある日の話。
今日は、テニスの地区大会やった。
当然、俺らの中学、四天宝寺中は快勝で、
明日まだ試合がある。
俺は謙也さんと明日あたる学校の試合を見ていた。
そこでの出来事やった。
「謙也ー見つけたで」
「あー!侑士っ!お前、何してんねん?」
「聞いてないん?夏休みやろ?大阪に戻ってきたんや、んで、謙也んとこに泊まるねん」
「はあ?オカンから何も聞いとらん!」
「さっき謙也ん家行ったら多分まだ会場にいるでって言われてな」
「ホンマかー、侑士久しぶりやなあ」
「謙也、相変わらずのアホ面しとるんやな」
「うっさいわ!」
謙也さんの従兄弟の忍足侑士さんが大会会場に現れた。
あんまり関わったことはないけど、
謙也さんのこと沢山知ってそうやし、ちょっと苦手や。
「あれーお前は、財前光、やったか?」
「そうっすけど」
「で、お前ら付き合ってるん?」
「侑士っ、そゆことは、デカい声で言うな、や」
「付き合ってますけど」
「財前っ…!」
「謙也ずいぶん、俺に相談してたもんな」
「は?何、謙也さんそうなん?」
「…おんー…ちゅうか、侑士黙れや…」
「まあ、謙也のファーストキスは俺やったけど?」
侑士さんは、そう小声で言いながら、
俺に嫌な笑みを浮かべてくる。
エロボイスやしホンマ、嫌や。
この人絶対謙也さんを狙ってるやろ。
「謙也さん、俺ちょっと飲み物買ってきますわ」
「ホンマ?ならここで待ってるで」
「また後でな、財前くん」
何やあの顔。さっさと何処か行け、みたいな顔。
飲み物なんか要らんわ。
少し離れた建物の陰に隠れて、謙也さんと侑士さんの様子を見る。
2人仲良さそうに話している。
「なあ、俺に……みん?優し…」
「は?っ、冗談…やめ…、俺は、……、好きや、ねん」
声はよく聞こえないけれど、
謙也さんが顔を真っ赤にして侑士さんを睨んでいた。
侑士さんは、謙也さんを引っ張って連れて行く。
俺はこっそり後を追った。
その時、侑士さんが俺の方を一瞬見て笑ったことには気付かなかった。
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