部活が終わって俺はあえてゆっくり着替えた。
謙也さんとはあの後もずっと話さなかった。
それで落ち込んだのか知らんが、謙也さんはずっと
部室の少し離れた机に伏せたままだった。

そのとき、白石部長に
俺は聞こえるか聞こえないかの小声で話しかけた。


「…俺、あとで鍵返しとくんで」

「おん、あんまり謙也をいじめるんやないで?」

「わかってます」

白石部長はやっぱり分かってたみたいで、
多分この後ナニをするかなんて知っているんやろな。
ホンマこの人は完璧や。


ユウジ先輩と小春先輩、千歳先輩、
その他皆が帰り、

白石部長と俺と少し離れたところに
謙也さんが残る。

俺は謙也さんに聞こえるような声で言った。

「白石部長、ホンマ完璧やわ」
(俺の計画を知っているなんて)

部長は驚いた顔をするが、

「おおきになー」

と言って笑っていた。

2人して、謙也さんを見ると相変わらず伏せたままで。


「なら俺はそろそろ帰るで、またな財前、謙也。」

「襲われないでくださいね、ちゅーか、俺も帰ろうかな」

俺がそう言うと謙也さんが思い切り
立ち上がり俺に近づき、腕を掴む。

「財前っ、…話あんねん」

切羽詰まったような泣きそうなそんな顔で。
その顔ええわ、ホンマに。
でも俺はそんな思いを隠すかのように冷たく言い放つ。

「なんっすか、まあ俺もあるんで、ええですよ」

白石部長は笑って俺らを、見ながら、

「そしたら、また明日な」

部室を出て行った。


白石部長の足音が聞こえなくなると
謙也さんは俺を押し倒して言う。

「財前っは、俺より白石がええ、…の?、嫌いになったんっ…?」


あぁ、笑える。
俺はこないに好きなんに。



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