お見舞い *




「今日謙也さんはおらへんのですか。」


昼休み、俺は、朝練に来なかった謙也さんを心配して
わざわざ3年2組に来て白石部長に尋ねた。

「あーそや、風邪引いたみたいやで」

「ホンマですか、なら今日部活休みますわ」

「あ、おいちょお、待て」

俺は白石部長の声を無視して教室を出る。
部活する余裕なんてあらへんわ。
恋人のお見舞い行くに決まっとる。

午後の授業は全く集中できひんかった。

…謙也さん、大丈夫やろか。


帰りのHRが終わると俺は急いで学校を出て謙也さんの家へ向かう。

途中近くのコンビニで2つ白玉ぜんざいを買って。

謙也さんの家に着いて、インターホンを鳴らすと、
謙也さんのオカンが出てきた。

「あら、光くん。もしかして謙也のお見舞い?ありがとねぇ、上がってや。」

「お邪魔します」

「ごゆっくりねー、謙也もそこまで酷くはないみたいやから」

「ホンマっすか?」

「ええ、まあ行ってあげてや」

そう促され、俺は謙也さんの部屋に行く。
謙也さんの家は大きい。
けど、何度も来ているから構造は
しっかり頭の中に記憶している。

俺がノックをすると、謙也さんは

「オカンー?いつもノックなんかせえへんやん?どないした?」

と言ってドアを開けた。

「え?財前っ?」

謙也さんは、少し顔が赤い様子だった。

「謙也さんっ、大丈夫っすか…」

「何や財前そんな不安そうな顔して、ちょお微熱でただけやで」

「微熱って、何度…」

「37.2やで。学校行こうと思ったんやけどオカンが反対してもうて」

「…なんや…良かったわ…。倒れてるんやないかと思うて…」

「お、おん、とりあえず中入ってや」

謙也さんの部屋に入れてもらうと俺は腰を下ろした。
テーブルの上には、何個も薬が上がっていた。
謙也さんのオトンが医者であるため、
健康に注意している家庭だったのだろうか。

そしてそのたくさんの薬の中に一つ目に入るものがあった。

「座薬…?」

「おん、そないに熱ないのに置いていったんや。ちゅうか自分で入れたことないねん」


この人はアホか。
そう言われたら入れてあげるしかないねん。
俺は自然と笑みがこぼれてくるのが分かった。

「謙也さん、尻だしてや」

「え、なんや」

「座薬入れてやるんすよ」

「いらん、熱ないねん、いらん」

謙也さんは首を横に振るばかりだったから
耳元で囁いてやった。

「謙也さん、俺アンタに明日学校に来てほしいねん」

「ざ、いぜんっ…」

謙也さんはこれに弱いねん。
顔を真っ赤にして俺を見つめる。
若干微熱もあるせいか目も潤んでる。

あぁ、俺もやばいねん。

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