電車に乗り込み、開いている座席に座ると財前が話しだす。

「ようやく、謙也さんと旅行いけるんかー」

財前にしては可愛いことを言う。
たまに見せる可愛いところに俺は弱いようで。

「俺も財前と旅行なんて楽しみやわ」

「謙也さん、キモいっすわ」

あぁ、普通の財前や。可愛くあらへん。
そんなことを考えているうちに俺は意識が飛んでいた。

「…て、起きて、謙也さん。次降りますよ」

「んあ?」

「何ぼけっとしとるんすか、早く起きて」

俺は財前の肩にもたれて眠ってしまっていたらしい。

「財前、すまん」

「デカいいびきかきよって最悪やわ」

「え、すまん、すまんな」

「嘘やけど」

嘘つきやがった。俺が謝った意味ないやん。
到着の知らせがなり、俺たちは電車を降りる。


「うぉー、あれ何や?あっちも変なのあるで」

「もうちょい大人しくできへんのですか」

「せやかて、テンションあがるやろー?」

「まあ、そうっすけど。」

「おーい、財前、ぜんざい屋さんあるで!」

俺は財前を大声で呼ぶ。
財前は周りを気にしているようで嫌そうな顔を浮かべる。

「謙也さん、ちょいうるさいねん。俺が恥ずかしいわ」

「気にしないっちゅう話や。ほな行こ、ぜんざい屋さん」

「はいはい」

俺は財前を連れてぜんざい屋さんに入る。
お店の中を案内されて席に着くと店員さんが注文をとる。

「俺はこのデカイので、財前は?」

「白玉ぜんざいで」

注文を確認した店員さんが

「ホンマ仲良えのね、カップルみたいや。おまけにお団子持ってきてあげるね」

なんて言うもんだから俺は顔が真っ赤になってしまった。
財前も下を向いていたから少し照れていたのかもしれない。

まあ、ホンマにカップルなんやけど…とは言えへんけど。


食べ終わって店を出て歩くと、アクセサリーショップがあった。
カップルがたくさん居る。

「謙也さん、俺ちょおここ見たいっすわ、ええですか」

財前がこの旅行で初めて自分の行きたいところを言ったので
俺は嬉しくなって

「ええで、いくらでも見てき」

なんて言ったらもう何分も財前は店の中を見ていた。
俺は財前と一緒に入ったもののすぐに飽きてしまい、

「隣のお土産屋さん見てきてええか」

という始末。

「そうっすか、分かりました」

と財前はアクセサリーから目を離さずに言った。


「…俺はアクセサリーに負けたんか。かわいそうな俺」

などとぶつぶつ言っていると

「何してはるんですか、俺の買い物は終わりましたよ」

と財前が後ろに立っていた。

約1時間。

「お待たせしてしもうてすみません。」

「ええよ」

俺は明らかに態度に出てしまった。

「怒ってはるんですか」

「怒っとらんわ」

あぁ、せっかく旅行に来たのになんやねん、俺。
財前もこれじゃあ気分悪っちゅう話や。

「すみません、次あっち行きません?」

そう言って財前が指差したのは男女どっちでも
入れそうな雑貨屋さんだった。

「おん」

「多分、謙也さんの好きな消しゴムありますよ」

「ホンマか?なら行こ」

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