光→←謙也



「謙也さん一緒に帰りましょ」
「…え。」

部活終わり部室で突然、財前に言われた俺は正直戸惑っていた。
こんなこと、滅多にない。

そして、最近よく分からないけど、財前とは気まずい。
何故か、避けてしまう。

「どうせ、帰る人、居らんでしょ?」

何だ、その理由は。
ちょっとイラっときた俺は

「はあ、いるわあ、なあ?しらい、」

白石と呼ぼうとしたら、

「すまん、今日は無理や。」

なんて言って片手をひらひらさせて
部室を出て行きよった。

「ほらな、ええやないすか、たまには。」

「…おん。」

奢らされるのかなーとかそんなマイナス思考なことばかり
考えていたが実際はそうではなかった。

財前の好きな音楽の話とか、善哉とか喋っていたが
俺はこの空気が何なのかよう分からんくてずっと黙ってた。
そしてやっと口にした言葉はこれだった。

「財前ほな、また明日な」

そう、もう気付けば分かれ道だったのだった。
体を傾け自分の家へ帰ろうとした時、
財前に急に肩を掴まれた。

「アンタ…俺のこと好きなんやろ。」

そう言った財前の顔は切なそうだった。

俺は

「…は?」

と力の抜けたような声を出していた。


「最近、俺ば避けとるし、いつもそないな顔してみてきて、誘ってるんすか」


避けてるのはそうなんやけど
そないな顔と言われてもしょうがあらへんし、
誘ってるって何や

と考えている間もなく、


「好きなんすわ」

とキスをされていた。


「んー・・うっ…ッ?」

突然のことに目を見開く。

「すんません」

財前は少し俯き目を閉じてそう言った。


「もう、しませんから。ほなまた明日」


背を向けた財前は白石と同じようにひらひら手を振っていた。


…、嗚呼。そうだったんだ。



俺は衝動的に後ろから抱き締める。

「…っ財前」

「…謙也…さん?」

「俺、こないな顔してるし、まだちゃんと自分の気持ち分からんけど、多分、お前のこと好きなんやと思う。」


「謙也さん、顔真っ赤ですやん」

「うっさいわ…」

「ああ、もう好きっすわ、ほんまに」

財前は、振り向き触れるだけの口づけをした。

「もう、そんな顔、俺にしか見せんといてください。」


(そんな謙也さんの火照った顔、誰にも見られたくない)




―――――――――

翌日部室にて。

白石 「お〜やっとか」

謙也 「何がや?」

財前 「白石部長、うっさいすわ」

白石 「謙也、コイツな俺に謙也さんと帰れるように協力してくださいって…」

財前 「だまれや、部長」

謙也 「???」

白石 「財前、後でグラウンド走ってこいや。」



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