鬼畜な後輩君 *






「あんた、アホちゃいますか」

「俺かて好みがあんねん」

「だからってこの、パーマの女はないやろ」

「そしたら、お前のストレートの子もないやろ!」


日曜日の昼下がり、俺は財前と、軽い喧嘩をしていた。
喧嘩の原因は、二人で見ていた雑誌のカップルのコーナーだった。

このコーナーを見ていて、“付き合うならどの子がいいか”
という話になったのが始まりだった。

ちなみに俺と財前は付き合っているため、
この話は、“もしも、付き合うなら”という仮の話であった。


しかし、見事に、俺と財前の好みは合わなかった。
俺はふわふわのパーマの女の子。いかにも女の子らしい。
財前はストレートヘアの女の子。どちらかというと大人っぽい。


「こんだけ女いんのに、この人とかないわあ」


言っておくと、このパーマの女の子、かなりかわええ。
けど、どうやら財前は好みやないらしい。


「はあ?めっちゃかわええやろ」

「あんた、どんな趣味してんねん」

「どんな趣味って…」

「やからモテへんのですわ、ホンマ、アホやな」


何回アホって言うねん。
もう怒った。

俺は、先輩やで。

確かに、財前は好みやないかも知れへんけど、
そないに否定しなくてもええやん。


「俺は怒ったで」

「は?」

これは、しばらく距離を置くパターンやな。


「じゃ、もう帰るわ」

立ち上がった時だった。

「謙也さん、」

「何やねん、まだ何か…」

言いかけたところで、唇を塞がれて、視界が変わる。


目の前には、天井と、財前。

「俺にそないな口、聞いてええと思ってるん?」

「何…?」

「ちゃんと、躾、せなあかんな」

そう言って、ニヤッと笑った財前を、
思わず見つめてしまった。





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