「謙也、大丈夫か?」


曲も作った。
皆で練習もした。


「ちゃんと、歌えるやろうか」

「最初は、ドラムやからな、頑張りや」

「財前にも連絡したで」

「ユウジ…財前くんは、なんて?」

「今日、ライブハウスで小さなライブあるんや、招待制やさかい、このメールに添付した画像、ライブハウスの入り口で見せてな、って」

「流石やな」

「で、ライブハウスのお姉ちゃんにも言っておいたから大丈夫やわ」

「じゃあ…成功するように、頑張るで」



もちろん、お客さんは財前1人。


「…謙也さん、何で俺1人なんすか」

「何か招待したんやけど誰も来れなかったみたいやな」

「そうなんすか」

「謙也、始めるで」


「1曲目、… ah ecstasy」

「2曲目、…ecstasy prince」


「最後に、ドラムとボーカルが変わります。はい謙也」


「ボーカルは…初めてなんですけれど、聞いてください、君と奏でる」


上手く伝えられへんかもしれない。
意味が分からないかもしれない。
それでも、今の俺の最大限の力を出して、
一生懸命考えた曲や。


好きだって、伝えたい
いつも、そばに居て支えてくれる君が好きです
だから、これからも君と音楽を奏でたい


「財前、俺はお前がずっと好きやった!」

「…え…?」

「今日、俺がボーカルをやったのは財前にこの気持ちを伝えるためや!」

「けん、やさん」

「…ずっと、ずっと支えてくれておおきに、大好きや!」


きっと財前は引いている。

ポロッと、涙が零れてきた。

演奏だけが進んで、歌が進まない。


「謙也さん…ッ!」


気付いたら財前に抱き締められていた。

「もうええです、泣かないで」

「ざい、ぜん…っざいぜん…」

「俺は、ちゃんと恋してます」

「え…?」

「謙也さんに」

「え、ぇ…?」

「出会った時から、アンタに一目惚れでしたわ」

「ホ、ンマ…に…?」

「じゃないと、作曲なんてやりませんわ、俺これでも忙しいんすよ?」


そう言って、ふわっと笑みを浮かべる財前。
俺の大好きな笑顔やった。

「謙也、おめでとさん!」

「謙也!財前と幸せになりや!」

「光くん、謙也くんを頼むで!」

「光くん、謙也をたくさん調教してやるたい」



あぁ、そうやった。皆いるんや。

皆に祝福されながら抱き締め合う俺と財前。

「謙也さん、目ぇ閉じて」

「…ふ、ぇ…?」

目を閉じたと同時に重なる唇。

俺の初めてのキスの相手は、
初めて好きになった人やった。


「おめでとさんー!」



皆に拍手されて、財前にキスされて。


「ホンマに、幸せやぁ…」


「これからも一緒に良い音楽作っていきましょうね」


財前が笑みを浮かべながら、額にキスを1つして呟いた。



( 君と奏でる恋の歌 )


prev next

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -