君と奏でる




「アカンなー何かしっくりこない」

「財前、どないしたん?」

「謙也さんたちのバンドの曲作ったんやけど。しかも、今回は作詞作曲で」

「…ホンマに!?」

「でも、何かしっくりこないんや」


俺は、忍足謙也。
一応人気バンドのドラム担当してるんや。

で、こっちが財前光。
財前とはバンドで人気が出た頃に知り合った。
俺らの音楽が好きらしい。

それからは作曲をしてもらったりもしてる。
バンドでライブがあれば見に来てくれる。


「そうなん?どんな感じ?」

パソコンから音楽を流すと、珍しくバラードの恋愛ソングやった。
いつもは激しめの曲やったから。

「恋愛系が良いかなっと思って作ったんやけど」

「ええやん…俺の、」

「…え?」


―――俺の気持ちと同じみたいで。



そう、口にすることはできなかった。
けれど、俺は出会った頃から財前が好きだった。

男が男を、なんて考えられないと思っていたけれど、
財前と出会ってからはそんな考えもなくなっていた。

俺らの音楽を、真剣に考えてくれる。
あんまり見せない笑顔が可愛い。
作曲をしている姿がかっこいい。


惚れた点を挙げればきりがない。



けれど、財前は、俺らの音楽が好きで。
それで協力してくれていて。

俺のことは、ただのアーティストくらいにしか思ってないだろう。


だから、言えない。

言ったら、この関係すらもなくなってしまうかもしれない。


「謙也さん?」

「…いや、何でもないで」

「恋愛ソングって、恋してると音楽とか歌詞とか作りやすいんですよ」

「…ッざいぜ、んは、恋してないん?」

「え…?」

一瞬、財前が止まる。

俺は何を聞いているんだろう。


「…あ、えっと何でもない」

「…俺は、恋、して…」


ピピピ、っと携帯が鳴り響く。

財前の携帯だ。


「あーすんません、はい。あ、分かりました、すぐ向かいます」


財前が携帯を片手にメモを取る。

「謙也さん、仕事入ってしまったんで、その曲、バンドのメンバーさんで相談して、変えたいところ変えて使って下さい、んじゃ、また連絡します」


そう言うと、財前はすぐに出て行った。




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