「ひか、る」
「…やから、俺には彼女がいて」
「好き、なん。行かないで」
そう、小声で言うのは部活の先輩の忍足謙也さん。
俺には、可愛い彼女がいるのに、
同性の彼に部活終わりの部室で告白された。
謙也さんは無愛想な俺に、親切にしてくれた。
だから、大切な先輩の1人だった。
そう、大切な先輩の、1人…だった。
「でも…、俺となら、ヤっても、妊娠、せぇへん…っ」
「…はぁ」
そういう問題じゃなくて。
俺には、大切な彼女がいる。
だから、いつもの俺なら、
「彼女いるし、無理やわ」
なんて、断ることができたのに、
今回の相手は部活の同性の、先輩。
それでも、ユウジ先輩とかなら、
「俺先輩とちゃいますから、無理っすわー」
と、軽く流せたのに。
何故だか、今の謙也さんを見ていると、
冷たくすることも、軽く流すことも出来ず、
ただ、目を見つめるばかりだった。
「なあ、光」
距離が縮まって、俺を抱きしめる謙也さん。
「身体だけでもええねん。俺を抱いて」
少し、涙声で呟く謙也さん。
俺の中で、何かがプツッと切れた音がした。
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