最近、視線を感じる、ような気がする。
ストーカーとかじゃなくて…

視線の相手は、クラスの、忍足謙也くん。

テニス部で髪は脱色して凄い色だけど、
性格はそんなに悪い人でもなくて
クラスの男女ともに慕われている、と思う。

そんな人が私を見ている、なんて自意識過剰かも。

それに、目があったと思うとすぐそらすから、
私じゃなくて、私の友達を見ているのかも。

だから気のせいかなって思ってたのに。


「名無しさんちゃん、」

放課後委員会で遅くなった私は一人で教室に居た。

「あ、忍足くん」

テニス部のジャージを着た忍足くんが入ってきた。
でも、まあ視線のこともあって、
ちょっと気まずくなって、私は黙ってしまう。

「ちょお、忘れ物してもうて。あ、委員会だったん?」

「そうなの、ちょっと長引いちゃった」

「これから帰るのかー…、気いつけてな」

忍足くんが優しく笑うから、
私はドキッとしてしまって。

「あの、忍足くん」

「どうしたん?」

私は、何を言おうとしたんだろう。

――私を見てた?それとも違う誰か?

そんなこと言えるはずもなくて、

「また、明日ね」

そう言って急いで鞄を持って教室を出ようとすると、
急に腕を優しく掴まれる。


そして静かな教室に忍足くんの低い声が響く。


「俺、名無しさんちゃんのこと好きなんや」

驚いて顔を上げた私の瞳には
彼の真っ赤な顔が映っていた。


( 私はもう、彼に惹かれているのかもしれない )












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