私たちは小さい頃からずっと一緒だった。
家も隣で家族同士も仲が良い。
いわゆる幼なじみ。
でも年は私の方が学年1個上。
その日はたまたま玄関を出たのが一緒の時間だった。
「深司。」
「…。」
「深司ー聞いてるのー?」
「何だよ朝から。聞こえてるってば。」
「あー聞こえてた〜?何か返事ないから。」
「名無しさんの声ってキーキー高音だから嫌でも聞こえるんだよね。」
「うるさいわ!」
「そっちがうるさい。で、何なの」
「今出る時間なら一緒に学校行こうよー」
「ふう〜ん。しょうがないな」
コイツは昔からこんな性格だった。
いちいち気に障るようなことは言ってくるし
よくぼやく。
「しょうがないなって何?」
二人並んで歩きながら彼のほうを見ると
お得意のぼやきが始まった。
「今日は静かに景色見ながら行こうと思った、昨日は練習ハードだったし…」
「あーもう分かったよ、なら1人で行くからいいよ」
私は立ち止まってそんなことを言いだす。
私にとっては深司と行くのはとても楽しい。
でも、深司は嫌なんだなぁと思ってしまう。
「え、ああ。ごめん。一緒に行こ」
はっと我に返ったように振り返って深司が言う。
(無意識にぼやきが始まるらしくいつもこんな感じだった。)
「え…?」
1歩手前を行く彼を見て私は驚いた。
「名無しさんどうしたの、俺の顔になんかついてるの?」
「え、違う、違うの。」
いつの間に、そんなに大きくなったの?
小さい頃は私のほうが一回りも大きかったのに。
「ねえ、深司、身長伸びた?」
「なんだ、そんなこと。伸びるよ、中学生だし。伸びないとでも思ったの?」
「…違う」
「俺だって、伸びるよ。ちょっと甘く見てる?」
「いや、違うの、ただ…」
( 少し、寂しくなった。だなんて言えない。 )