小さい頃は、お互い素直になれてなかったね。
「本当、跡部なんか嫌い。」
「俺だってお前なんて嫌いだぜ」
「嫌な奴のくせにお金持ちで腹が立つ。」
「フン、分けてやろうか。」
そうやって笑うアンタのこと本当は嫌いじゃなかった。
中学生になっても跡部の性格は相変わらずみたいで。
当然の如くお金持ちしか通えない学校に行って。
私は一般庶民の学校でなかなか会える日も少なくなった。
噂だけは嫌でも耳に入ってくる。
「跡部くん、すごい人気らしいよ」
「テニス上手いんだって」
ある日私は一人近くの公園のベンチに居た。
考え事や何かあったときはいつもここに来る。
「あの時、もっと素直だったらなあ。」
「名無しさんが素直なんて似合わねえけどな。」
「え?」
後ろから声が聞こえて振り向くとそこには跡部が居た。
「え、あ、跡部?」
「アーン?変わりすぎてわかんねえのかよ?」
「わかるけど!全然変わってないし。顔も性格もね」
「フン、お前も相変わらずだな。」
彼は本当にあまり変わってなくて。
だけど、氷帝学園の制服は住む世界の違いを感じさせられた。
「全然、違う世界の人みたい。」
私は無意識に呟いていた。
「…俺はそうは思わねえけど?」
笑う彼はあの頃と同じ笑顔で。
「本当はね、会いたかったよ。…少しだけ。」
「素直じゃねえなあ。」
「うるさい」
「まあ…俺も、名無しさんに少しだけ会いたかった。」
そんな彼の言葉を聞いて2人で小さく笑った。
( あの頃僕らは上手く気持ちを表現できなくて。
でも今、少しは変われたかな? )