「名無しさん先輩、好きっすわ」
財前くんはいつもそう言う。
「財前くんほどかっこよかったら他にもたくさんいるじゃん」
「そないなこと、どうでもええっす。俺は名無しさん先輩だけしか見とらん。」
そうやって俯く彼。
だけど、
「ごめんね。」
また私はそう言わなきゃいけなくて。
だってね、彼氏が居るんだもん。
「何で、ユウジ先輩なん?小春先輩が、」
財前くんの言葉をさえぎって言う。
何故かユウジのことを悪く言う財前くんを
見たくなかったし、
彼の声が震えていたから
何となく、聞きたくなくて。
「確かにちょっと変なとこはあるけど、優しいんだよ」
「そないに悲しい顔せんといてください。」
財前くんは今にも泣きそうって感じで。
私もつられそうで。
でも、私はユウジが好きで。
その気持ちは変わらなくて
「いつになったら俺を見てくれるんすか」
財前くんなら答えは、多分、わかってるでしょ?
この気持ちはずっと交わらないって。