私とユウジはずっと一緒だった。
生まれた病院も、小学校も、そして今の中学校も。
初恋はユウジで、もちろん今もユウジが好き。
中学生になっても、私は何も変わらず、ごく普通に生活してきた。
でもユウジは違った。
学校ではモノマネで人気者だし、
テニス部ではレギュラー。
何だか、遠く離れていっちゃったみたい。
今では、唯一、近かった家だけが私を支えていた。
「ユウジ」
「名無しさん!偶然やなあ」
テニス部が終わってユウジが家に着く頃に
偶然を装って外に出て行く。
案の定、ユウジは重たそうなラケットバッグを担いで歩いて帰ってきていた。
「毎日大変そうだね」
「大変っちゃあ、大変やけど、楽しいで」
「何か、」
「おん?」
「ユウジが離れていってるみたい」
私は何を言っているんだろう、彼女でもあるまいし。
ユウジも今のは引いただろう。
「何言うとんの?俺はここに居るで?今も昔もお前の近くにおるやん」
いつもの笑顔で頭をポンっと叩く。
「ユウジ、」
「俺も名無しさんも、何も変わってないし、離れてないで」
少し背の高くなったユウジを見上げると、無邪気に笑っていた。
「俺にとっちゃお前は特別やからな」
その言葉が、どんな意味を含むのかは今の私には
分からなかったけれど、
目の前には何も変わらないままの
( 笑顔があったんだ )