「くらの、すけ」

「あぁ、名無しさんどないしたん?」

「もう暗くなるから帰らなきゃだめだよー」

「もうちょいやりたいねん」

蔵ノ介ってすごいと思った。
小学生なのに、重たいラケット持って暗くなるまで
公園でボールを打ってる。

私も最初は一緒にテニスやるんだけど
途中で飽きてしまって砂遊びとか、ブランコとかしていた。

「明日は、天気やね」

私は赤くなった空を見てそう言った。

「せやな、明日もテニス出来るし、今日はこれで帰るか」

「本当?」

「名無しさん、危ないから一緒に帰ったるで」

夕焼けが綺麗な日は次の日も晴れって言われてたから
よく蔵ノ介は一緒に帰ってくれていた。


だから、私は夕焼けが好きだった。


「あ、今日めっちゃ綺麗な夕焼け」


中学生になると蔵ノ介はテニス部に入部し、
2年生で部長の座になった。

もちろん、一緒に帰ることなんてなくなった。

でも、夕焼けを見るたびにあの頃の蔵ノ介が思い浮かぶ。
少し寂しい気もするけど。

「〜っ!名無しさん!」

「え?」

振り返ると息を切らした蔵ノ介が立っていて。

「…今日部活なくなったんや、一緒に帰ろうや」

「え…!うんっ!」


あの時みたいだね、なんて恥ずかしくて言えないけれど。


「名無しさん、昔、夕焼けの時一緒に帰ったよな」

「え、あ、うんっ!覚えてたんだ」

「覚えてるわ、楽しかったし」

「私も、楽しかった」

「…、名無しさん。俺絶対テニスで全国優勝する」

「…約束ね」


夕焼けの下、あの時と同じ景色の中で、


( 2人、小さな約束を交わした )









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