幼い時は謙也くんと、侑士くんと3人で居たのに。


「名無しさん、俺東京に行くことになったんや」


突然、侑士くんが居なくなっちゃって、
飛んでいく飛行機を見送りながらずっと、謙也くんの傍で泣いていた。

「名無しさん大丈夫やで、俺が守ったるわ」

その頃はまだ黒髪だった謙也くんが私の隣でニコッと笑ってくれた。


「名無しさん…、俺と付き合ってくれへん?」

「けん、やくん?」


中2になって謙也くんに告白された。
ずっと、私のこと好きだったらしい。

私も謙也くんのことは好きだった。


でも、それは友達として、だったと思う。


私の中には、ずっとずっと侑士くんがいたから。



「ごめんなさい、」

「やっぱり、侑士が好きなん?」

「…うん」

そしたら謙也くんがニコッって笑って、ほな頑張り!って言ってくれて
俺、協力したるわ、って。


夏休みの時、侑士くんが謙也くんの家に泊まりに来たらしく、
私もそれを謙也くんに教えてもらって遊びに行った。


「侑士くん…!」

「名無しさんやんかーエライ別嬪さんになったんやなあ」

「そんなことないわー」


3人で昔遊んでたな、懐かしいな、そう思った矢先に
謙也くんが立ち上がる。


「侑士、言いたいことは言った方がええで?」

謙也くんは部屋から出て行った。

何…?



侑士くんが私を見つめて、深呼吸して
小さく告げた。

「…名無しさん、あんな、俺ずっと好きやってん」


「え…?」


「…遠距離なるけど、付き合ってほしい」


私にとっては凄く幸せなこと。
でも、

「私が、侑士くんと付き合ったら」

「うん?」

「謙也くんはどうなるの?」

「え?」

「私は侑士くんのこと好きだけど、3人で笑いあってる時間も好きや」

「…名無しさん、俺と謙也はイトコやで?それくらい大丈夫や、な?謙也?」

「おん」

ドアの向こうから謙也くんの声が聞こえる。

「謙也くん…!」

「謙也な、最初泣いてたんやけど俺を応援してくれるって言うてな?」


バンッ、とドアが開く音がして振り向くと
謙也くんが真っ赤な顔して立っていた。

「泣いてたとか余計なこと言うなや!」

「あ、つい」

「ふっ…、」

「名無しさん…笑うなや!」

「謙也くんは本当に優しい」


ずっと、昔から優しい。


「そないなこと言って、また好きになってしまうっちゅ―話や」

「いや、名無しさんは俺のやで?な、付き合うて。3人でも仲良く出来るんやし」

「うん、私も侑士くんが好きだった」

「幸せやなーそこは」

謙也くんがイグアナと喋ってるのが見える。


あぁ、良かった、

まだ少し気まずさはあるけれど
また3人で笑える日がくるみたい。



( 前の3人に戻れて良かったよ )






第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -