幼なじみの名無しさんは
小さい頃からいつも喧嘩ばっかりだった。
そして、もちろん、今も顔を合わせれば口喧嘩が絶えない。


世間は2月。


「桃城とバス同じとかありえない。一緒に帰るみたいじゃん」

「うっせーぞ!俺はあっちに座るからいいっしょ」

「てか、アンタ自転車でしょ?」

「パンクだ、パンク。つーか寒いじゃん」

「だっさー」


名無しさんは俺が何を言っても、言い返してくる。
俺のことが嫌いなんだと思う。

昔は桃、って呼んでくれたのに
いつからか、桃城になってるし。

だけど、俺はそこまで嫌いじゃなかったりする。
だって、アイツ面白えし、明るいし。


「んじゃあ、またね。あ、明日は自転車で行ってね」

俺より1つ前のバス停で降りる。

「ああ、またな」

そう言って別れたのが3時間前だった。



そして今俺の家の玄関に名無しさんがいる。

「何してんの、お前」

「うるさいっ」

インターホンが鳴って扉を開くと
顔を真っ赤にした名無しさんがいた。
防寒具はコートと帽子だけだ。
きっと寒い中、来たんだろう。

「いや、マジで何しに来てんの」

「だから…っ」

これ、そう言って可愛いラッピングのされたものを渡された。

「俺…誕生日、夏なんだけど」

「違う!!チョコレート」

「へ?」

自分でも分かるほどに間抜けな声が出た。

「だから、バレンタインのチョコレート!」

「バレンタイン?あぁ、でもまだ先…」

「試しに作ったら上手く出来たから…急いで持ってきたの」

「試し、ねえ。まあ、ありがとよ」

「お返し待ってるから。ならまたね」

「はいはい。つーか、これ」

俺は帰ろうとした、名無しさんにちょっとマフラーを投げつける。

「え?」

「送ってやりてえけど、お前俺のこと嫌いみたいだし、だから」

「…っ」

名無しさんは無言でその場に佇んでいた。

「どうした?」

「その中に手紙が入ってて、その義理チョコとかじゃないか、らっ」


そう言ったと同時に走りだした名無しさんを俺は
自然と追いかけて抱きしめていた。


「…待てよ」

「何っ、はなし、て」

「それは俺のこと好きだってことでいいの?」

「…」

名無しさんは静かに首を縦に振った。

「よかった、俺すげえ嬉しい」


そう言って俺は名無しさんに唇を重ねた。



( 喧嘩もしたけど、本当はずっと好きだった )




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