「千歳くん、好きや。付き合ってほしい」

四天宝寺に転校してきてから
もう何回も告白されたばい。

でも女の子たちはきっと俺のこと何も知らん。
目が悪いことも、好きな色さえも知らない。

何が良かったんかよく分からんばい。
テニス部の彼氏が欲しいのか。

「俺は好きな人がいるばい」

だけど、俺にも好きな人がいるけん、
いつも断る。

「好きな人って誰?どんな人なの?」

女の子は納得がいかないような
表情を浮かべて聞いてくる。

「ここの人じゃなか。どんな人かは俺もよく分からんばい」

そういうと女の子はふざけてるのかと言って
俺を突き飛ばして去っていく。

いつものことだからもう慣れたけん、気にも留めない。

「…はあ」


好きな人。

九州に居た時の同い年の名無しさん。
感情を表に出さんけん、
何を考えてるのかさっぱりやった。

でも、俺はそう言うところに惹かれて、しだいに仲良くなった。

「千歳、私は、皆で集まるより1人で行動する方が好きなんだ」

「俺もばい」

「でも、こういう人はあまり好かれないみたい」

「そげんこつなか」

滅多に笑わない名無しさんがふふっと笑ったことは今でも覚えている。


「懐かしいばい」


もしも、九州に戻って会うことが出来たら伝えよう。


「前からずっと、名無しさんが好き」






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