< 宍戸視点 >
「宍戸先輩、あの」
「名無しさんちゃんじゃん、何かあったのか?」
「鳳くんのことで、」
ちょっと浮かない顔をして俺に近づいてきた、
1個下の後輩の名無しさんちゃん。
そして、テニス部の後輩の鳳長太郎の彼女でもある。
「それで、わざわざ俺のクラスに?メールでも良かったんだぜ?」
「先輩に直接聞いたら、安心するからですよ」
そうやって笑う名無しさんちゃんのことが
俺は結構前から好きだったりする。
長太郎に片想いしているってことで
相談を受け始めたあたりから
多分好きになってたんだと思う。
2人が付き合ってから気づいたんだけど、
激ダサ、だよな。
まあ、長太郎の彼女だし、手出しするつもりはねえけど。
「で、何があったんだ?」
「最近、鳳くん、悩み事あるみたいで、ボーッとしてるんですよね」
「え?」
「何か聞いてません?」
そういえば、長太郎、この前俺に、
――女の子って誕生日プレゼント何あげたら喜びますかね?
って言ってた気がするな…、言ってたな。
「あー…うん、心配しなくても良いと思うぜ?」
「何でですか?」
「多分、悪いことじゃないから」
と、俺は名無しさんちゃんに笑顔で言った。
「本当ですか?、なら宍戸先輩の笑顔信じますからね!」
「お、おうっ」
名無しさんちゃんはありがとうございますと笑って
お辞儀をして俺の側から離れて言った。
嗚呼、その笑顔に何度惹かれたことだろう。
何度、彼女の言葉に嬉しくなったんだろう。
もしかしたら、俺のこと、なんて、
そんなことありえねえのに。
2人が付きあってもなお、そう思うなんて。
( …俺は激ダサだぜ。 )