「…名無しさん先輩。」
これは、俺と、マネージャーの名無しさん先輩が
偶然、休日の朝早くに部室で会った時のこと。
「赤也くん」
「来るの早いんですね」
「いやいや〜、マネージャーだもん。普通だよ」
「でもまだ1時間前っす」
「だったら赤也くんも早いんじゃない?」
名無しさん先輩はあとで使うタオルとかドリンクを
用意しながら俺と話す。
「俺は、強くなりたいからっすよ」
「赤也くんはテニスが好きなのね」
「好きっす」
先輩のことも好きです、なんて言えねえけど。
だって、言ったらこの関係すら
なくなっちまうかもしれねえんだぜ。
「頑張ってる赤也くん見てたら応援したくなっちゃう」
「ほんとっすか?」
「うん、頑張り屋さんだなあって思うよ、さすが次期部長だね」
なら、
「次の大会、俺を見てください」
俺だけを見て下さい、とは言えなかった。
やっぱりどう思われるのか怖いし。
でも、これからも練習頑張るから、
俺だけ見て欲しいっす。
大会で頑張るから、
かっこいいところ見せるから、
だからたった一つの願いが、叶えばいいな。
…俺は、先輩に想われたいんす。