堺さん編
あたしのパパは、
サッカーせんしゅです!

堺パパ!



うわあああん!
小さな女の子の叫び声が聞こえたかと思うと、とたとたとたと名前ちゃんが走ってきた。


「パパのばかぁ!」
俺の足にしがみついて、ぐずぐずと泣いている堺の娘、名前ちゃんは少し堺に対して怯えているようだ。


「よしよし、どうしたのかな?名前ちゃん」
まだまだ小さい名前ちゃんを抱き上げると、
「丹しゃん!」
泣いてはいるが笑顔で名前ちゃんは返事した。


「パパがね、えっとね、みどりいろのにがいのたべろっていうの」
名前ちゃんが身振り手振りで教えてくれる。
………それって、もしかして。

「ピーマンかな?」
それ!と俺を指さして言う。なるほど。確かにあれは食べられたもんじゃない。
(現に俺も嫌いだ)


「パパ、こわい」
やさいきらい!そう名前ちゃんが叫んだ。


「見つけたぞ名前!!」
「びゃぁあああん!」
堺がきたとたん名前ちゃんが泣き出した。

「堺、顔怖いぞ」
俺が笑うと、堺はうるせえ、と吐いた。
手には弁当箱。もしかして奥さんの手作りなんじゃ……?


「名前、降りてこい」
「…………や」
みどりいろの、いらない。
それは子供ならではの我儘で。

「せっかくお母さんが作ってくれたんだぞ」
堺の言葉にぴくん、と名前ちゃんが反応した。

「残したら、お母さん悲しむだろうな」
堺の諭すような言葉。
名前ちゃんは俺にぎゅっとしがみついた。


「大丈夫、パパ怖くないよ。」
ピーマンお兄さんも頑張って食べたんだよ!
にっこり笑って名前ちゃんに言うと、しがみつく力が弱まった。


「パパ、こわくない?」
「うん」
「たべたら、なまえのこと、パパもママもほめてくれる?」
「当たり前だ」

するり、しがみついていた手を離し、名前ちゃんは堺の元へ走った。


「パパ、ごめんなさい」
「ん」
多くは語らず、といったところか。
俺は堺の背中を見て、あいつは父親になったんだなぁと思った。



なまえ、ぴーまんをこくふくします!


「あぁ、そうだ丹波、お前ピーマン食べれるらしいな?」
「(げ……)ま、まぁね」
「明日、楽しみにしてるぞ」



prev next

bkm
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -