深海少女

※蝮視点
※京都弁は変換ツール使用(多少のミスはお許しを)





「蝮やない、ええ天気やねぇ」
「椿姉さま」
椿姉さまが気づけば後ろに立って、にこにこと笑っとる。私は資料を探しとった。…メフィストの不正を暴く証拠を。私は椿姉さまも裏切ってしもておる。しかし、よう引くわけにはいかん。私は明陀を守る。そう決めたさかい。
とはっても決定的な証拠はなんも出てこおへんどしたが。早う明陀を救いたい。そない、気持ちやけが突っ走ってしもておいやした。


「何しとるの?やけに古い資料さがしとるんやねぇ」
「…はぁ」
思わずため息をついてしまう。なんぼ探しても証拠は出てこへん。私の心は深海にいるみたいに暗かった。どないしたん、と椿姉さまが問う。これを椿姉さまに言えたら、なんぼ楽やろうか。いつも一人、空回る私を嗤うやろうか。
やけど、言えへん。言えるわけもおへんどした。椿姉さまは上部の部長。出張所に広まるのは目に見えとる。
それに、私は椿姉さまに毎度毎度助けてもろておいやしたにゃ。椿姉さまにやくたいをかけるわけにいかなかった。


「どもないです、椿姉さまはなんの用事でココに?」
「や、蝮どこにおるのかいなって」
蝮のお気に入りの和菓子屋行ってきてね、蝮の好物こうて来やはったんどすえ。椿姉さまは軽く笑った。皆の分はないさかい内緒でね、小さなおなごみたいに笑う椿姉さまから目を離せおへんどした。
なんでこないな私にこないなに優しくしてくれへんにゃろう。この人は。明陀の人さかいに、こないなに優しくしてくれへんにゃろうか。私で思ってちびっとやけ傷つおいやした。

「そないなことないわ、蝮さかいに優しくすんやよ」
「なんで分かったん?!」
「声に出とったよ」
椿姉さまの顔を見るとおねーさんの顔やった。毎度申たちや私ら、妹弟とに対しはる顔やった。「さみしーならうちのとこにおいない?いつやて歓迎しはるよ」にこり、と笑う椿姉さまの姿にうちは泣きそないにならはった。
けれど、頼るわけにへーかいない。嘘つきなうちをしった椿姉さまはどないしはるにゃろう。うちの心も笑顔もなんもかも汚れてしもた。悲しみの深海に沈んでしもたうちは、よう椿姉さまには届かいないにゃ。


「椿姉さま、おおきに。ようホントにどもないどすえ。」
「よし、そんなら羊羹食べようか!」
早う明陀を救おいやしたい。今度椿姉さまを助けるのは私。毎度暗闇に居て、おびえとった私を救ってくれとったのは、光をくれとったのは、まぎれもなく椿姉さまさかいに。





私は、この人を守る。ちびっとやて恩返しでけるように。



深 海 少 女
(まだまだ沈む)





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