きっとこれは


―疲れてるな、これは。

名前は丹波の様子から、瞬時に情報を読み取った。

―寝不足、それと野菜が取れてないってトコかな。

「あれ、なんで抱きついたんだろ」

肩に顎を乗せ、眠たそうに呟く。

「丹波くん、最近キチンと寝てるかい?」

「んー………寝てない」

「野菜は?キチンと採ってるかい?」

「俺、野菜ダメなの」

でも堺が食べさせようとしてくる。

丹波はそれだけ言うと、この態勢で寝てしまった。


「丹波くーん………」



「…あいつ、どこ行きやがったんだ」

一方堺はというと、休憩時間が終わったにも関わらず丹波が戻ってこないので、探していた。

「丹波くーん………」

女の声が聞こえる。

あいつ、女と逢引してんじゃねぇだろうな。

少し小走りになった自分に
少し笑い、角を曲がった。


「あ、さか………
チームメイトの方ですか?」

なんだなんだ。

丹波は女の肩に顎を乗せて寝てしまっていた。

「あぁ、そうだが………見ねえ顔だな」

―一応、年上なんだけどな。

名前は少し困った顔になると、言葉を発した。

「後々分かりますよ」

「すまねぇ、丹波が迷惑掛けた」

「いや、別に………
あ、丹波くんにしっかり寝て、野菜を食べるように言っておいて下さい」

「(こいつ、何者だ……?)ああ、わかった」

名前から丹波を引き剥がそうとすると、顔が必要以上に近づいてしまった。

「あ、っ……」

「……!」

顔を離そうとすると、今度は手が触れた。

「す、すみません……」

「いや、こっちこそ……」

なんだか、初初しいカップルのようなやりとりをしている2人。

それを見ていた傍観者に2人は気付いていなかった。



「堺さんにもついに春がきた!」

―傍観者、世良はこの事を石神に事細やかに説明した。

「ふぅん、それはそれは……
楽しくなりそうだな」

石神特有の笑みを浮かべると、世良に言った。

「その恋、実らせてやろうじゃねーの」


きっとこれは
波乱と恋の予感




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