「久しぶりだなぁ、このクラブハウスも」
名前は軽く笑うと、クラブハウスの中に足を踏み入れた。
ヘッドホンから流れる英語の歌詞は、名前の気持ちを落ち着けるのには充分だった。
―彼女は10年前の事を思い出した。
その出来事で、彼女の心を壊すのは容易だった。
「若かったんだね、僕も」
幸い、このクラブハウスには人がいないようだ。
名前は涙を流した。
「………道草くってる場合じゃないな、っと」
名前はすくっと立ち上がると軽く屈伸した。
そして名前は小さく呟いた。
「せいぜい僕を楽しませてよ?
ETU………」
練習は休憩に入ったのだろうか。
選手達のがやがやとした声が聞こえはじめた。
「まずは松原コーチに挨拶かなっと」
名前はフードを被ると、コーチ陣に近づいていった。
「松原コーチも酷いっすねぇ」
名前がけたけた笑うと、し、仕方ないだろう?!と返ってきた。
「お前が戻ってくるなんて話、聞いてなかったんだから」
松原コーチが溜息をついた。
「でもまあ、名前がコーチとは………なかなかやるなぁ」
「ははっ、そうですか?」
自分はETUのコーチやるなんて思ってなかったですから。
名前は松原コーチに手を差し出す。
「宜しくお願いします」
彼女は、強くなった。
ETUの星を支えた人 彼女は誰よりも強く咲き誇った。