彼女の名前は


「ETUはめっちゃ弱い!」

子供達が次々と声を出すと、
子供達に囲まれた1人の女―名前は、声をあげて笑った。

「じゃあ、僕がETUを強くしようかな」

―――今日も彼女は


男並に高い身長に短く切られた髪。
化粧っ気のない顔は元々整っていて、
遠くから、否、近くで見ても男に見える。

少年、コータはそう思った。


「そんなの無理だよ!」

1人の男の子が言い、そうだそうだと皆が叫ぶ。

「どうして?」

名前はけらけらと笑っていた。

「無理だよ……」

「諦めるのはまだ早いと思うけどね」

名前はフードを被り、グラウンドの方へと歩いた。

「今年はさーETUが変わると思わない?」

少しでもいいから信じてみなよ。

「僕の勘は当たるよ?」

ボールを持つ姿はどこか見たことのある風貌だった。


「ゴトー、」

今季よりETUの監督となる彼―達海猛。

GMである後藤はくるりと達海の方向へ向いた。

「俺の右腕はいるの?」

「名前ならもうついてるはずだけど」

そっか。
短く返答し、独特の笑みを浮かべた達海は、小さく呟いた。

「また、名前と組めるなんてね」


子供達がぽかんとしているうちに、名前は遠くまで行ってしまっていた。

「お姉さん、名前は!?」

名前は振り返って、

「内緒」

と言っただけだった。



「早く帰ってこないかなぁ、―――――兄さん、」

彼女もまた、独特の笑みを浮かべていた。



彼女の名前は
日本にその名を知らしめたETUのスターだった。


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