彼は遠くを見ている


彼は、遠くを見ている、

十年前だって、十年後の今だって。

君は私を見てくれない、

私はいつだって貴方の背中を追いかけてきたのに。


「達海さん」

私が名前を呼んだって返事はしてくれない。

嫌われてるとか好かれてるとか以前に、

興味を持たれていない。

それが、達海さんにとっての私。


怪我をした。

ただ単に、こけて足を捻った程度。

有里ちゃんにごめんねというと「いいですよ、ゆっくり休んでください。」と

なんとも後輩らしい言葉が返ってきた。

うちの広報部は私と有里ちゃん以外働こうとしない。

有里ちゃんに負担が掛かる、

そんな事だけは絶対にしたくなかったのに。


「よう」

短く声が掛かる。

軽く吃驚すると、彼―達海さんはニヒッ、と笑った。

「お前、こけて足捻ったんだってな」

声をかけられて嬉しいはずなのに、何故か悔しく感じた。

達海さんに腹が立ったとか、そういうのじゃない。

「有里ちゃんの負担にはなりたくなかったんですけどね」

自嘲気味に笑えば、達海さんはハッ、と笑った。

「大体、普段から仕事しすぎなんだよ、お前」

は?と問い返す前に、視界が暗くなった。


一瞬の出来事だった。

「自分が疲れてるとか、そういうとこすらわからねえの?」

頭の上から声が聞こえる。

暖かな、達海さんの匂いに包まれる。

きっと、これは幻覚だ。

疲れすぎで、頭が都合の良い夢を見せているだけだ。


「―なぁ、」

昔話を聞いてもらっても良いか、なんて聞かれるけれど、

そんな余裕はもうとっくにない。

上でため息が聞こえた気がした。

「俺がイングランドに行くときにな、一人だけ応援してくれた女の人がいたんだよな」

「彼女は、俺が行くって言った瞬間、迷わず『頑張ってね』って言ったんだ」

「その彼女のことが忘れられなくて、日本に戻ることを決めたんだ」


何を言っているかわからない。

「なぁ、あれって、お前なんだよな?」

違う、とは、

言えなかった。

「久々に会った時、あの時よりも綺麗になってた」

「初めてだよ、こんなに『こいつを俺の奥さんにしたい』なんて思ったのは」


「何を、言ってるの…?」

「俺ももういい年だよ?結婚だってしたい」

「そういうことじゃなくて、」

「だったら何?」

息が詰まった。

達海さんが、こんなことを言うなんて思っていなかったから。

「なぁ、お前の気持ちはどうなの?」

抱きしめていた身体を離して、達海さんは聞いた。

「私、は……」


「私は、達海さんの事が、好き、です」

その答えを待ってた。

達海さんがつぶやいたその言葉は、

重なる唇によってかき消された。


彼は遠くを見ている

彼の未来に、私はとっくに入っていました。







やらかしました\(^o^)/がっつりwww
意味の解らないお話ですいませんでした。達海さんの口調がちっともわからないww
素敵な企画、ありがとうございました!!

シャー消し 管理人 風鈴


君は僕の期待を裏切らない様に提出させていただきました。


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