それ俺のスタンドです | ナノ
梃子でも動かない


(承太郎達の後を追う形で目的地へと向かった越美、そして中立のスタンド“プレイ・V”。彼女達の目指す場所は、SPW財団目黒支部からそう遠くない場所にあった)

『……この林さあ……』
《知っているのか?》
『いや、最近のニュースで家庭ごみの不法投棄が多いって言われてただけ』
《フン、そうか》
(制服のままだったが、越美は躊躇わずに荒れた草むらを進んでいく。木々の隙間から漏れ出る光を享受しようと、枯れかけた植物が行く手を阻んでいる)

「ひいいぃいい〜〜っ、あんまりだあ〜〜っ 誰か助けてよォ──」
『? 何か聞こえるな……こっちの方角から聞こえるぞ』




「しくしくしく…… もう悪いコトしないよぉ〜〜〜っだから下ろしてェ〜」
(彼女達が見たのは、体の向きを逆さにされ、手と足を杉の幹にくくりつけられた男の哀れな泣き様だった)
『マジかよ!待ってて、今下ろしてやる!“ネイビィ・ソード”ッ!』
(鎖で繋がれた錨の剣が、淡く光を放ちながら投射され男の腹を貫く!……と、同時に物体の束縛から解放された男の体は、重力に従い頭から落ちていった)

ドサーーーーッ
「いでェッ!」
『うわッ!ごめん……怪我しちゃった?』
「ひいい────ッ ありがとうございます〜〜〜〜っ このご恩は一生忘れません〜〜〜〜〜ッ」
(すぐに起き上がって正座し感謝の涙を流す男に越美は一歩引いた。鼻水付きの手で握手を求められたからだ)
『ぶ、無事ならそれでいいよ……ところでこの辺りを男の集団が通らなかったか?それか怪しい人物でも良いんだが』
「来ました、来ました!帽子を被った大男とじいさん、赤毛と銀髪と変な耳飾りの奴が!そいつらがワタシをあの木に縛り付けて置き去りにしたんだ!」
『そりゃ災難だったなあ』
「でしょ!?だからあんたには感謝してもしきれないよォ〜〜っ」
『ところで君はどのスートに所属するスタンド使いなんだっけ』
「……なんでそんなこと聞くんだ?」

(越美の中心から飛び出した鋼鉄の爪とも言える獲物が、瞬時に男の体を一閃する。と、まるで肉体をすり抜けるかのように財布や隠していた刃物、衣類までもが地面に落ちた。


 つまり今現在男は真っ裸である)


「………!?」
『私の後ろで何をさせている?こんな鬱蒼としたトコにいるだけでも怪しいのに』

ガラガラガラガラッ!
(彼女の背後で生命があるように蠢いていた機械の山は、重力に従い地面に叩きつけられスクラップにされた。ニュースにされてもなお止まない不法投棄の成れの果てが活動を停止していた)


『てめーの小さいケツの穴まで調べられないだけマシだと思いな』
《こいつのスタンドのついて教えてやろうか?》
『お願い』
《スタンド名“ハーピアー”、本人はエディシー・ラン。棍棒の騎士。既に能力は知れていると思うが、人から不要とされたものに知能を与えるらしい》
『こいつの命は今終わったけどね』
(錨の切っ先をエディと呼ばれた男の眉間に浅く突き刺す。ほんの少し皮膚が割けただけなのに、男は黒目を白目に変えて失神してしまった)

『なんてね、って、あっ……もう戦意はないだろうし、放っておくか』
「先を急ごう」


〈棍棒の騎士:エディシー・ラン スタンド名“ハーピアー” 戦闘不能〉




〈一方、敵のアジトにどうやってか辿り着いたジョースター一行……〉

(アジト─薄暗い雑木林にいかにも怪しい洋館があったのだ─の、開ききった玄関扉の前)
「い……いきなりジョースターさん達が消えやがったぞッ!一体どーなってやがる!」
「落ち着くんだポルナレフ、ジョースターさん達は「戻ってこない場合は10分後、館に火を付けろ」と言ったではないか」
「しかし、今が突入のチャンスなんじゃあねーのかよ!?オレとアヴドゥル以外を落とし穴に引き込んだあの女のいない今が!」
「私たちの居場所などとっくに知られているだろう。ほら、廊下の突き当たりを見てみろ……」

(アヴドゥルの指差した先には、物陰の闇に潜むなにか小さくうごめく生き物。……ネコだ。しかし普通のネコより人間じみた顔立ちだ)
「あのクソ猫……!」
「恐らく監視用だ。私たちはまず、あの賢しい猫をどう騙すかについて考えねばならんだろうな」
「ったくよー、ネコは幸運の象徴だってのに、オレ達には不幸しか運ばねーよな全くよォー!」





〈承太郎、ジョセフ、花京院は……〉

「ゲームだと?ふざけるな」
「別に先を急ぐような冒険じゃあないんでしょう?ちょっとぐらい付き合ってくれてもいいんじゃあないかしら、甲斐性なしのお坊っちゃん」

(三人の屈強な男達の前に立ち塞がるのは、女。地下だというのに、満点の星空が頭上に輝く、広大な砂漠。)
(砂漠とはいったが、本来ならば日光のない夜の砂漠というのは極寒の世界。しかし今ジョースター達が立ち尽くすその場所は、吹き荒れる冷たい風もなければ踏みしめる足の裏に砂の感触もない。)

(……異様な景色を本物だと思うには、何から何まで足りなかった)









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