それ俺のスタンドです | ナノ
炎の生物探知機


「────い、オイ、越美!どうした!」
『!』
(越美の目の前に“あれ”の姿はなく、それどころかあの砂漠の街も、照りつける太陽も、鬱蒼として地面に日の光が届かない樹木の大群へと戻っていた。イギーはいつの間にか木陰でだらだらと寝そべっている)
『……?』

「君はッ!どうしてここまでついて来たんだ!」
『ハイ? あれっ、ポルナレフさんにアヴドゥルさん』
「白々しい態度をとるんじゃあないぜ!女の子にゃあここは危なすぎる。とっとと帰りな、お嬢ちゃん」
(手で厄介者を払う仕草に、先程までの妙な幻覚よりも頭にきた越美)
『誰がお嬢ちゃんですか。私は透明化のスタンド能力があります。自分の身だって守れます、そして戦えます』
「ああ?何だって?そーいうことは一度でも単独で敵のスタンド使いを倒してから言うモンだぜ」
(……ポルナレフの一言に越美の顔が醜く歪む。敵との遭遇率が高いことが、なにより彼女の戦闘経験値が素人同然であることを如実に表しているからだ。)
『でッ!でも、私は今までずっと──』

「声がでかいぞ二人とも。敵の本拠地は目の前にあるのだ」
(その言葉にはっと息を飲む。目の前のその建物は乾燥した粘土で出来ており、日当たりの良くないそこには妙に不釣り合いだ。湿気で壁の表面はぼろぼろと崩れかけ、どう見ても古い建物の筈なのに苔や蔦は明らかに若い)
『(この建物、どこかで……というかこんなにでかい建物なのに、どうして今まで気がつかなかったんだ?近くには子供の集まる公園や高校だってあるのに)』
「それより重要なことあるだろ、アヴドゥル!越美が来ちまったんだぞッ!」
「アギ」
「こちらの都合はどうあれ、私たちを心配して来てくれたのは確かだ。それに……だ……(ポルナレフ、今さら彼女を言葉だけで追い返せないだろう?)」
(耳元で彼にのみ話される内容に、ポルナレフは納得するしかなかった)
「……あーあ、分かったよッ!おい、ホントーに自分の身ぐらい守れんだろーなっ?でなけりゃ縛り付けてでも置いてくぜ」
『……私の能力は知ってますよね』
「チクショー、分かってるぜ!ったく、くそ犬まで連れてきやがって」
「イギギッ……ワフ」



(館の廊下は奥になるほど暗く、まるで終わりが見えない)
『ところでこの猫は』
「監視猫の一匹だと思うのだが、なぜだかポルナレフになついてな」
「ミャオ」
『はあ……』
「おいっ 入るぜッ!アヴドゥル!イギー!……越美!」
(注意深く辺りを探る。……チャリオッツの剣が床を叩いて確かめ、三人と二匹は素早く廊下を移動し、特殊な形に壁をくり貫いた入り口から中を覗く)

「……おいアヴドゥル、どうする?延々続いて見えるぜ」
「うむ」
(ポルナレフは自分の目を疑った。部屋のあちこちから階段が四方に伸び、交差し、長い通路にはさらにその先があり、まるでエッシャーのだまし絵の世界に迷い混んだように感覚に訴えてくるその光景に冷や汗を流した)
「ジョースターさんは館に火を放てと言ったが……」
『こんな遠大な迷路では逆に、我々に危険が及びます』
「そうだ。なので」

(アヴドゥルの“魔術師の赤(マジシャンズレッド)”は、口から吐き出す炎で六つの燃える球体を作りそれらを炎の縄で結んだ。前後左右、上下に一つずつの形となる)
「この炎は生物探知機だ……人間 動物の呼吸や皮膚呼吸、物体の動く気配を感じとることが出来る」
『ヘェーッ それって例えば私の透明化でも見つけることができちゃったり?』
「ああ。『スタンド』のエネルギーまで分かるからな。……ジョースターさん達は地下に連れ去られた。まずは下へ向かおう」

(その時、前方の炎が大きく燃え上がる)
「早くも反応だ!前方に何かいるぞ」
(ポルナレフと越美が身構える横をすり抜ける動物二匹)
「ガオォォーオォ!」「フギャアァーッ!」
(イギーから出現した砂の集合体“愚者(ザ・フール)”!監視猫からはギョロリとした目の大型猫のスタンドが出現、ある一点に爪を立て引き裂く!)
「ギョエエエエエ──ッ!」
『あっ!』
「おいおいおい!な、なんだこの女は?」
「周囲を見てみろポルナレフ、越美。霧が晴れるように迷路が消えてゆくぞッ」
(“実際に”彼らが立っていたのは地下に延々と伸びる階段の上などではなく、簡素な家具のみを揃えた薄暗い部屋であった)
『位置としては、玄関からすぐの階段を降りたところですか』
「この先に必ずジョースターさん達がいるはずだぜ」
「既に分断されてから30分近く……敵は相当手強いものと見ていいだろう」
(地下にあるこの部屋には当然窓もなく、埃と黴のはびこる室内は妙に閉塞感がある)

(暗闇にも目が慣れてきた。ゆっくりと、視界が広がっていく……)
『……! あ、


     「あっちに別の部屋への入り口があるぞ!」』

『なにィッ!?』
「ドアが二つ! 前方と右! ど、どっちだァ〜〜〜ッ?」






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