それ俺のスタンドです | ナノ
生者は死人の夢を見るか


 (承太郎は目を覚ました。)
(ここはどこだ?……顔の向いている先は天高く青く透き通るような空だ。雲一つない。いや……風に吹かれているのか高速で流れ千切れていく)
(ざぷ、ざぷ、と耳慣れた波の音と共に、自分の服の後ろ半身や髪の後ろの方が水に浸されているのだと気づき、上体を起こす。ここはかなりの浅瀬で、辺り一面見たことのない場所だ。……三万円もする制服のズボンが砂で濡れている。表情には出さないがかなりのショックだ)

(いつまでも波に遊ばれてはいられない。コンクリートの大地に水を吸って重い足を運んで……)



「……何だと?」

(一歩踏み出す、と同時に見る間に制服が乾いた。即座にスタープラチナを出し周囲を睨み付ける、しかし誰もいない。ということは今の不可解な現象は自然なときの流れゆえに起きたとでも?
 そんなはずはないッ!)
「成る程……これがいわゆる“間違い探し”というヤツか」






〈時間は十数分前に遡る────彼らは一人の女と対峙していた〉

「急いでいないのなら私と楽しくゲームしましょう?急いでいても私は貴方達を足止めしなくちゃあならないからあぁ〜……やっぱりゲーム……していくでしょ?」
「フーム、するとお若いレディ。ワシらはここを脱出するためには絶対、君とゲームをせねばならんということかな?」
「Exactly!(まったくその通りよ!)」
「それならここは僕が……」
「あっあ〜♪日本のオトコノコって噂の通り本当にせっかちね!小さくてスゴくカワイイってのはなんだか間違いみたいだけど……」
「てめえ、ゲームがしたいってんならさっさとルールを言いな」
(スタープラチナが動物の豹のようなしなやかな筋肉を怒張させると、承太郎にうっとりと見惚れていた女も気づいて慌て始めた)

「女の子を殴ろうなんてまったく、どんな教育受けてるのかしら!いいわ、ルールを説明してあげる……それにはまず私のスタンドの説明からしないといけない」
(ポーズをとった女の後ろから、唇を鮮やかな赤で飾った女性型のスタンドが出現)

「私のスタンド“ミー・ミー・ミー”ちゃァ〜んッ!ヒップがキュートであらゆる男達は夢中になるのおぉ〜〜ッ 普通の人には見えないケド」
「ほう、そのスタンドで我々とどのようなゲームを行おうというのだ?」
「全年齢向けのにしとくれよ」


「ミー・ミー・ミーは死者の夢を見せることができる」


「「「!?」」」
「詳しく言えば“死ぬまでの光景”を夢の中で追体験できるスタンド。その夢の中での出来事は本体の私にも分からない……が、見せられた夢から逃れるためにはただ一つ」

「その夢の“間違い”を見つけること」

「顔も知らない奴の死に様を見せつけられた挙げ句、間違いを見つけろだと?夢の中というのは何が起こっても不思議じゃあないから夢なんだぞ」
「まったくもってその通り!それに夢を見るってことは敵であるお前さんの前で無防備に寝るってことじゃ。何をされるか分からん」

「知らない人の死かはわからない。友人かもしれないし、もしかすると未来の自分の死に様かもしれない」
(本体の女はなんでもないかのように、可愛らしく微笑んだ)
「それに眠るのは一度に一人で十分だけ、あとの二人が私を見張っていればいいじゃあないのォー」





(そして、まず初めにこの不透明なルールを呑んだ花京院が夢現のまま発狂。一時的なものではあったが精神的にダメージを負わされ、祖父の制止もむなしく承太郎が次に名乗り出ることとなったのだ)


「(あの実感のない砂漠の幻覚よりもリアルな水の感触)……こいつはただの夢じゃあないってこったな」











(越美は息も絶え絶えに砂漠の町並みを歩いていた)

『どこ見ても日干しレンガと迷路みたいな道路ばっか……何をどうしたら日本から歩いて海を越えられんの……』
《まず背中のものを下ろすというのはどうだ?》
『あんた、この私にノンキにも時計台眺めて日向ぼっこしてた仲間を見捨てろって言うの?フツーにおことわり』

(越美は決して大きくはない背に赤毛の青年を背負って歩いていた。青年はぐったりと少女に寄りかかり引きずられ、かといって目立った外傷もなく、皮膚まで精巧に作られた人形のようだ)

『そもそもここはどこで、なんで建物の上に花京院がいんの?下ろすの大変だったんだけど……イギーも見失ってどうすればうわあぁーーーーッ!』
(越美は足元不注意でマンホールに落ちた)




《おい、おい》
『う』
《目を開けろ》
『……』
(マンホールから下の地面までまっ逆さま、更に花京院の重みで潰された越美。意識の復活に時間がかかったが、)


『なんだァーッ? 下水道の通路が変に寒いぞ……通路が…………凍っている?いや、待った、あそこ、あれは』




『あれは………氷に埋められた………動物の足だ』




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