それ俺のスタンドです | ナノ
まよいのもりRTA(リアルタイムアタック)


(風を切る音。)

(違う!その拳は風の流れだけではなくその場の空間さえ、間合いさえ、あるいは時間さえも超越して相手を蹂躙していた!)
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアアッ!!」
「ぎゃぽーっ」

「承太郎のラッシュは相変わらずキレが鈍らんな」
「痛っつつ……メルシー承太郎、あと花京院」
「僕をおまけみたいに言うな、手当てしてやるから動くなよ」
「そんなつもりで言ったんじゃあねーぞ」
「いいやポルナレフ、君はいつだって敵も味方も実力を甘く見るだろう!大体今回ピンチになったのだって君が」
「あ゛あ!?」
「おい二人とも。傷に響くから騒ぐんじゃあないぞ」
(近くの木に凭れ掛かるアヴドゥルとポルナレフは腕に傷を、ジョセフは帽子をずたずたに裂かれていた)
「全く、こいつら本当に変わらんのう。さて……」
(もはやぼろきれと化した帽子を丁寧にかぶり、ジョセフはぐるりと周囲を視界に収める。)


(……見渡すばかり木、木、木。地面には冬だというのにしっかりと根付いた枯草がはびこり、寒さに耐える針葉樹が成長しきったこの場所――森と言っても差し支えないだろう――では、数十人集まる程度の建物ならばすっぽりと覆い隠せそうだ)

「じじい」
(孫の声に振り返ると、年の割に大柄なその男の足元で意識を失っている刺客。その首根っこを掴んで持ち上げると、承太郎はこちらに目線を向けた)
「……いいや、その男はまだしばらく目を覚まさんだろう。情報を聞き出すのにもある程度経ってからでなければならんな」
「となると、我々でこの広い森の中を探索せねばならないという事でしょうか」
「げぇ〜ッ!マジに言ってんのかジョースターさんーッ!」
「ポルナレフ!動くなと言ったばかりだぞ!」
「痛ェ――――ッ!花京院、もっとやさしくっ!」
「ポルナレフ!うるさいぞ!」
「こらお前ら、まだ敵が潜んでいたらどうするんじゃ!黙っとれ!」

(ぎゃあぎゃあと騒ぐ仲間を背に、承太郎は周囲に鋭く警戒を張り巡らせていた)
「……… ………」
(自分たち以外に人の気配はない。警戒は解かない)
(しかし、承太郎にはもう一つ気がかりなことがあった)



「……越美」





〈一時間後、SPW財団にて〉

『だから、ジョセフ・ジョースターの許可はこの通り取ってあるって言ってるでしょう!?だから、早く、その手を離せよッ!!』
「その許可証は前回の面会でのみ有効なものですのでッ、これ以上はッ不法侵入の扱いになりますよ!ミス秋本ッ!」


《……外が騒がしいな》
(前回の越美との面会から暇をしていた囚われのスタンド、“プレイ・V”。部屋自体が捕縛のスタンドだという彼のいる部屋の外から、何やら数日ぶりに聞く女の声がした)
(ギュウゥ――――――ンッと独特の音と共に、ずるりとドアの向こうから侵入する少女。彼女の背後には、錨を振り下ろした姿で静止している半透明の男が控えている)

「き、消えた!?」
『危なかった……あのまま財団の人に足止めされていたら、今度こそジョセフさんを呼ばれるところだった』
《……また何かあったのか》
(その声に振り向いた彼女は、とても焦っているように見えた)

『承太郎と花京院がいつの間にか、学校から姿を消していたんだ。私に何も言わずに……クラスメイトによると学校には来たらしいし、ジョースターさんのホテルにも連絡がつかない。と言うことは、

“私だけに黙って”何かをしに行ったということだ』
《……》


『どこかなんてすぐに検討が付いた。ここから本題なのだが』
(一呼吸置いて、越美は心底嫌そうに顔を歪めた)
『……正直言うと、敵のアンタに頼らなくちゃあならないってことに虫唾が走るし、できればこんなことは二度となければいいなって思っている。しかし今、私には何の手がかりもない。だから恥も何もかも捨てて頼みたい』
「結論は?」


『あなたにお願いだ。私を、敵のアジトまで連れて行ってくれ』







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