それ俺のスタンドです | ナノ
足りない仲間、イレギュラーは二人いる


(空条承太郎と謎のスタンド「プレイ・V」に何らかの因縁が存在する。越美を含む仲間の面々は新たな問題に頭を悩ますこととなったのだが)
(しかし“彼女”だけは疑問の質が違った。そしてその疑問を解決するためジョースター一行に頼み込み、あることを実行する。それは彼女一人でスタンドと対話することだった)


《……よし、修復は完了した。自分の能力が復元されているか試してみろ》
(越美の周囲を蝋燭の火のように心許なく漂う人魂。これこそが越美をリタイア寸前まで追い詰めた“プレイ・V”の正体であった)

『礼は言わないよ、元はといえばあんたのせいだから。“ネイビィソード”!』
(越美の背中から、殻を脱ぎ捨てた蝉のようにつるりと透明な人型が現れた。筋骨粒々のそのスタンドは一度己の肉体を確かめるように全身に力を入れ、それから自分の獲物を取り出す)


『確か鎖の先っぽに錨が……OK、きちんと填まってる。
 それにしてもあんたのスタンド。いやあんたがスタンドだけど、数ある超能力のなかでもことさら変な奴だ』
《だろうな》
『自分で認めるのね……』

(説明しよう!この物語のオリジナルスタンドである“プレイ・V”のスタンド能力のひとつは「スタンド能力の切り離し、または取り付け」である!文字や絵を丸ごとコピー&ペーストするのと全く同じである!
 先日襲撃した非スタンド使いの女と既にスタンド使いの猫が誰にも見つからず財団内に侵入できたのは、この能力で越美の能力を切り離して彼女らに取り付けたからだった)

『誰だ今の』



《それはそうと秋本越美よ、本当に小アルカナの一味を倒しに行くのか》
『当たり前だろ!誰が命令してるのか知らないけれど、私や知り合いの命を狙う輩は……この手で一発キツくシメておきたいって思ってたんだよね』

《流石は元不良だな》
『今は品行方正をモットーとしてるから、って待ってやっぱり私の過去まで調査済みなのかこれ』
《敵を知り己を知れば、という訳だ。しかしやはり行くのか?ジョースターの末裔と共に、アジトへ乗り込もうというのか》
『ああ、それが?』



《貴様が死ぬか、仲間が死ぬか。どちらに転んでも後悔はないと言うのだな》



『……?ちょっと違うよ、“全員生き残って勝利する”という選択肢が残されているじゃあないか』
《在るわけがないだろう、そんな都合のいい選択は》
『あのさあー、教科書だって内容をスッゴク苦しみながら覚えても世紀の大発見があればあっさり変わっちまうんだし、思いつめてこーなっちゃいけないよオニーサン』
(越美は両手を目尻の横につけて、暗に“視野が狭い”と揶揄した)
『絶対的なことって人間の考えてるよりも案外少ないと思うよ。運命とかなんとかさあ、そーいうのに囚われるのって良くないと思うね』

《……なら》


《それなら、人間の生死は果たして定まっていないのか?ならば何故わたしの本体はあんな異国の地で奴らの死を悟り、奴らを生かしたのだ?ただの精神の残りカスであるわたしには理解が出来ないというのか……?》


『……それは知らんよ………(このスタンド、さっきから哲学的な小難しいことしか言わないわね……きっと本体もものスゴくメンドーくせー男だったんだろうなあ、名前の漢字は書きやすいけど)……承太郎みたいだ』
《? あの男がどうかしたのか。わたしの本体を見殺しにしたあの男を》

『あんた何か勘違いしてやいないか?私の知る空条承太郎は、例え嫌いな奴でもわざわざ見殺しにすることなんて無いよ。そいつの性根が腐ってなければだけど』
《そこまでジョースターの一族を擁護するとは……まさかお前》
『承太郎に惚れてるとかいったらはっ倒すぞ』

《違うのか?まあそうだろうな。貴様はあの空条承太郎の人生にはそもそも存在しないのだ……仮に“そういう仲”だったとしても、あの男は別の女性と結婚し子供を授かるのだから》






『……待って、承太郎って子供いるのぉーーーーッ!!?嘘だろ今いくつよ!?そんな話聞いてないけどちゃんと顔見せてあげてんの!?』
《誰が今いると言ったんだバカタレーーーッ!未来の話だ未来の話!待て待て待て揺するな!わざわざスタンド使って体を揺するなあああああーーーーーッ!》




                               つづく

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