それ俺のスタンドです | ナノ
聖杯の騎士の残りカス


「………」
(壁にかけられた時計の針が、朝を迎えた部屋にリズミカルに響く。
秒針が文字盤の十二と重なりあった丁度その時、小気味良い音を立てて襖が開かれた)
『おはようございます承太郎。朝だ』「………」
『おはようございます承太郎。朝だ』「………」
『失礼』
(一言断って部屋に入り、承太郎の枕元に正座する)
『承太郎。聖子さんが呼んでる。今日は早めに起きて“彼”に会いに行かなくちゃあいけないだろ、起きて』
「……」
(秋本の声にゆっくりと覚醒し始める青年。うっすらと目を開けると自分を覗きこむ想い人がいる。目を閉じる。目を開ける。目を閉じ)
「………!?!!!?!??」
『おはよう。そんな悪漢に襲われた生娘みたいな反応は求めてなかった。
 私聖子さん手伝ってんの、また食卓で会おう』
「あ?あ、ああ……」





「それで今朝はどことなくぎこちなかったのか。そのまま押し倒せば良いものを」
「アイツはおれ達の仲間だぜ。殴るのは正気じゃねえ時だけだ」
『承太郎は理由無く人に危害は加えんでしょう。その理由が問題な気もするけど』
「え?あー……分かったもういい分かりました。ご馳走さまお腹一杯」
「おーい!承太郎、花京院、越美ちゃん。着いたみてーだぜ」
(ポルナレフ、そしてその先にいるジョセフとアヴドゥルは一つの部屋へと吸い込まれるように入っていく。続いて高校生三人もそこに入室した)

「彼がそのスタンドで間違いないんじゃな」
「姿形を似せているだけとはいえ、こうしてみるとまんま承太郎だな……」
『はい。それにしても精神体であるスタンドをどうやって拘束しているんですか?』
「財団員にもスタンド使いが何人かおってな、そのうちの一人がこうして精神を留めるための道具を現実のものにできるのじゃよ」
「へえー……」
「確認も取れたところでプレイ・V(スリー)だったかな。お前の知っている情報を全て吐いて貰おうか」


(195cmの大男の姿をしたスタンドは押し黙ったまま口を開くそぶりも見せない。目の焦点もぼんやりと明後日の方角へ向けられている)

「………だーめだコイツぁ、てんで話になんねえじゃあねえか!アヴドゥル、気付けの代わりにちびっと焼いてやれッ!」
「そうムキになるなポルナレフ。しかし妙だな。今までの敵とこの男、いや精神の残り香と言うべきか。一目見たときから小アルカナとは別の、何かの運命が絡んでいるように思えるのだが……」
「アヴドゥル、てめーまで運命だのなんだのと言い出すか」
「私の本業を忘れたのかお前は」
「まあまあ二人とも」
『二人の承太郎がいて片方捕まってぼんやりだし、その前で男二人が言い争ってるとか……どんな光景だよこれは』
「! 待て!この男、どこか変だぜ!こいつ“さっきからどこを向いている”?」
「『は?』」


「────来た」


(瞬間、けたたましい警告音が地下全体に響き渡る)
「何だッ!また侵入者かッ!」
「ここの警備どうなってんだよッ!!仮にも天下のSPW財団支部だろーがッ!」
「ワシに言うなッ!しかし二回目ともなるとどうもおかしい……(まさか相手方にこーいうとき便利なスタンド使いがおるんじゃなかろうか?なにそれズルいッ!)」
「恐らく敵に……カメラや人の目を掻い潜るか、そもそも使い物にできなくするような手段を持つ者がいるのではないでしょうか」
「あっ それワシも思った」
「警戒しろじじい!恐らくまた“小アルカナのスタンド使い”のヤローだ」
『仲間を取り戻しに来たか、私達を纏めて殺せる自信があるか。
 あるいはそのどちらも……どうします?』

(少し考える素振りを見せる老ジョースター)
「ウウーム、では承太郎は花京院と。ポルナレフが越美君と。」
「私とジョースターさんはここで奴の見張りをしているから、チームに分かれこの周辺を警戒しよう」
「了解です。承太郎、行こう」
「……そうだな」
「越美ちゃんダーイジョウブだぜッ!オレがキッチリ守ってやっからよ!」
『はい、二人で協力して見つけ出しましょう』





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