それ俺のスタンドです | ナノ
「七人目」


「─それで、その男は件の“小アルカナの一味”とは全くの別件か?」
『いいえ。自分の本体が“聖杯の騎士”に属するものだ、と』
「確かに、そう言っていたのだな?」
『はい。私と……最初から聞いていたのなら、彼らの耳が証拠です』


「“運命の奴隷”か。ふざけた名前だな、だいたい何を根拠に僕たちのうち数人が既に故人だなんて……じゃあ今ここで生きている僕たちは一体誰なんだ」
『あのさ、イギーって誰?その人も旅の仲間?』
「イギーは歴とした犬だぜ。確かボストンテリアって犬種だったかなぁー」
『あ、ポルナレフさん』
「いや〜〜ッ!キミも大変だったろう、トチ狂った頭の男なんかに絡まれてなぁ、怪我は平気なのかよ?」
『骨は折れていませんし、痣も数日で消えるので。お気遣いありがとうございます
 承太郎と花京院が助けに来てくれたので無事でしたが……もしも来てくれなかったらあそこで私は死んでいたのでしょう。本当にありがとう、二人共』
「全く、あまり心配かけるなよ。ほら、承太郎も何か言ってやったらどうだ」トンッ
(肘で承太郎をこづく)
「………やれやれだぜ」


『そういえば、アイツの言動でちょっと気になるところがあってさ』
「どうした」
『“七人目”って誰?イギー以外にも誰か私の知らない仲間がいたのか?』

(一様に黙する若者組)

『え?ちょっ、ちょっと。なんで黙ってるんだ?』
「知らないんだ」
『………なんだって?』

「僕達は5人と一匹であの旅を終わらせた。“七人目”なんていないはずだ」
『そんな!じゃあアイツの言っていたことって一体!?』
「……」
「越美ちゃんよぉ、もしやアンタの聞き間違いって線はどうだ?それかそのイカレスタンド野郎の妄言なんじゃあねえの?」
「聞き間違いか………僕達はともかく、至近距離で聞いていた筈の越美が?しかも、アイツの物言いには確固たる自信があるように思えた。何か実存する根拠があるからあんな態度をとったのではないか、と」
「でもよ、オレ達の旅だって心にしっかりと刻まれるぐれー確かなモンなんだぜ!ましてや仲間の数え間違いなんて起こるはずがねーんだよなァッ!」
「落ち着けポルナレフ」
「承太郎、でもよぉ………」

『本当に知らないんですか』
「だからッ!そう言ってんだろーがッ!」
『ッ』
「ポルナレフ!少し頭を冷やせ!」
「っと………悪りぃ。
 でもよ越美ちゃん、あんたはオレ達の旅にはいなかった。どれだけ疑おうがあんたの勝手だが、“命を懸けた旅をした仲間を忘れる”だなんてサイテーな事をオレ達がする訳がねえんだよ」
「君には悪いが僕も同感だ。ああは言ったがエジプトへの僕たちの旅路、例え砂の一粒でも忘れるようなことは無い。魂を賭けたって良い」
「………」
(無言で帽子を被り直す承太郎。口には出さないが、彼らと同じ心持ちであることが理解できた)

『………口が過ぎました。ごめんなさい。貴方達の絆を疑うべきではなかった』
「分かってくれりゃあそれで良い。……キツい言い方だったが、オレ達は本気なんだからよ」
「とは言え3対1とは大人げなかったな。すまない、君もちゃんと今の仲間だ」
『いえ、これであのスタンド野郎の言っていたことがこちら側の撹乱であることがはっきりしました。花京院もありがとう、デレがちょっと過剰すぎて照れる』
「なんだ、もっとキツい言い方の方が良かったのか?次から余計なことを言う度にスプラッシュしようか」
『ごめんなさい止めろ』
「花京院、おめーってヤツは……」
「……」
(若干強張っていた空気が緩んだことで肩の力を抜く越美。彼女と仲間達が軽口を叩き合うのを、承太郎は些か離れた場所で眺めていた)



「話は終わったかの」
『ジョセフさん、アヴドゥルさん』
「例のスタンド男はSPW財団所属のスタンド使い達によって監視体制が組まれることになった。万が一にも逃げ出すことはないだろうな」
「そうか」
「さっさとゲロらせちまえよそんなモン!」
「そんな急くものではないぞポルナレフ。敵が疲弊するのをまず待つんだ。と言っても相手はスタンド体だから一概には言えないけれどね」
「まあ何はともあれ、“七人目”よりも目先の“小アルカナの一味”の方が大事じゃ。なんせひっきりなしにこちらを襲ってくるんだ」
「アイツの言い草からして“小アルカナ”のボスの方にはそれほど忠誠を誓っていねーようだからな。明日にでもシメて聞き出しゃ良い」
『承太郎も気が早いな……』
「まあそれはおいおいとして、承太郎。ホリィに連絡を入れてくれんか?わしもうちょっと後始末に協力せにゃならんのでな」
「?何を伝えるんだ」

「何ってそりゃあ、

  越美ちゃんをお前の家に預けるんじゃよ。彼女の家がたった数時間前に戦闘でボロボロになってしまったのでな、せめてもの応急処置じゃ」



「『…………………………………………………えっ』」




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