それ俺のスタンドです | ナノ
仲直りしようか


(ポルナレフが破壊した壁や天井の残骸を撤去する間、秋本、承太郎両名の間には何の会話も無かった。もっと言えば承太郎が何度か視線を送ったりもしていたが、大体いつも彼に話しかける方である秋本はうつ向いたまま口を開かなかったのだ)


(あのレストランでの事件が、彼女の中で尾を引いていた)


《翌日、下校途中》

「それは……なんというか……」
「………」
「君の言い分も分からなくはないが、些か言葉が足りなかった気もするな」
「……ああ」

(この数日間で秋本との不仲を花京院に看破された承太郎は、原因であると思われる出来事を彼に説明した。何とも言えない顔を見せる花京院と共に、暫くお互い無言で帰路に着く)

「あー、つまり君は“仲間のくくりに入れられない程に好「それ以上はやめろ」
  ……好「やめろ」何故そこまで頑ななんだ。だがスタンド能力にかかっていたとはいえ彼女にはあまりにも厳しい言葉だ……僕でさえ傷つく自信がある」
「………」
「ああもう!いざという時は頼もしいのになんて可愛らしい弱みだよ全く!」
「おれは今回の件をそこまで楽観視できるほど薄情じゃあねーよ」
「ではどうして何日も手を付けずほったらかしにしているのだ空条承太郎ッ!」

「時期を待っている」
「は?」
「越美への誤解を解くタイミングを計っていると言ったんだ」

「………………………………………………ハア………」
(そういう態度が新たな誤解を生むんだ、とか、これが「モテている男の余裕」という名の失敗なのか、とか色々思うことはあったが、全てを腹の底から吐き出すような深いため息でその場を納めることにした花京院だった)





 ・・・
《同時刻、秋本の自宅》

『承太郎と話をするのは久々だなあ』コポポポ………
(学生服を着た男女が、シンプルな色合いのローテーブルに向かい合って座っている。テーブルの中央には有名店のロゴが入った空き箱と、その中身だろう皿に乗った豆まんじゅう。そして今女の方が注いでいる緑茶の湯飲みが置いてある)

「……」
『どうせこの間の事だろうと思ってたよ。気にしてないってのは嘘になるけれど。

 いやごめんよ?あの時はスタンド使いを捕らえるのが先ってことしか頭に無くて、今更何をとかほら、ごめんよそんな顔しないでよ!悪かったって!』
(ちなみに承太郎の方は全くの無表情である)

『……考えたけどさ、そりゃ会ってそれ程経っていないのに仲間とか、さ、自惚れていたという自覚ぐらいはあるよ』
「てめーがそう思うんならそうなんだろうな」
『言うねぇー。私の方があんたと長くいたから錯覚したんだろう。絆というのは必ずしも時間に比例するわけではないからね、しかも彼らは皆確固たる意思をもった素晴らしい人たちだ。ただしく承太郎が気に入りそうな精神の持ち主!こりゃあ勝てるわけがない!
 あ、別にあんたのこと責めている訳じゃあないよ。ちょっとタンマ』

(心の底からと言った風の笑いを洩らす秋本。いわゆる鈍感だと一部で評される承太郎から見ても、その件に関しては自分なりの答えを出して吹っ切れたと分かる)
(少し待てと言いたげに手を前に突きだし、もう片方の手で湯飲みをすする。短時間で相当に喋っていたせいか、ひどくのどが乾いているようだ)

『………フゥ、よし。だけど、私はこうして巻き込まれた以上は、だれかを身代わりにしてビクビクしながら身を守るなんてことはしたくないんだ。自分の身ぐらい自分でなんとかできるよ、スタンド能力だってそのためにあるようなものだしさ?』

(湯飲みをじっと見つめていた大男が、ふとその無機質な緑の目を彼女に向ける)

「確かにてめーのスタンドは役立たずだな。ヘドが出るぜ」


『じょ、冗談キビシーなぁ、何。もしかして舎弟って言ってたのまだ気にしてる?小さい男よのォー、あ、ごめんって怖いな顔』
「………」
『そんなに嫌だったのならもっと早くに言ってくれれば……いや、仮に言ったとしても私が浮かれすぎて聞いちゃいないなんて可能性もなきにしもあらずだったり?』
「話も聞かない、役にも立たない、使えねー女だな。秋本越美よ」




『………ね、あんた。承太郎、じゃないよな』
(湯飲みを置き、背後にスタンドを出して目の前の“承太郎に似た何か”を睨む)
『あいつは無愛想だけど人一倍情には熱いんだ。口下手だけどあのときの言葉にも何か意味があるはずだろうし、ましてや友人をこき下ろすなんてことはおふざけでもしない。

あんた、誰?』






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