君と未来を歩む | ナノ




実力の差



そして日は流れ、夏休みの最終日一週間前。
おれは東京にある自分の家の前に戻ってきていた。


チャイムを押す前にがちゃりととびらが開き、おれの家なのに露伴が出てきた。
『………なんでだ?』
「きみんとこのお母さんに聞いたんだよ、もうすぐ幸彦の馬鹿が帰ってくるってな。……何か向こうであったのか?いつもよりブサイクだが」
おれの顔を見ていぶかしげにたずねてくる露伴に何もないぜと返せば、そうかお帰りと言ってリビングの方へと戻っていく。今さらだけどここはおれの家なんだけどなあ。
玄関で荷物を下ろし、座ってくつを脱ぐ。
この一ヶ月半の間毎日はきつぶしたそれは、洗ってもこびりつくどろや小石でそれなりに汚い。片方だけ脱いで石のたたみの上に置き、ためいきをつく。




……まさか、ちょっと下を向いただけでばれるだなんて。親友というのはすごいもんだ。


別にあっちで仗助や朋子さん、じいちゃんと仲違いした訳じゃあない。二人のどちらかの能力が他の人にばれたわけでもない。ではなんで(露伴の言ったことを訳すと)うかない顔をしていたか。

単純に、あいつの能力がものすごいってだけなんだ。

仗助のちょうのうりょくはどんなものでも直すことができる。ハート野郎が手を当てれば、壊れたおもちゃでも擦りむいたひざもずっと前に開けてしまったかべの穴でも、思いのままに。
それに、仗助の能力は「ゆうれい」という形で外に出すことができる。あまり遠くへは行けないみたいだけど、おれのようなただ相手を思い通り動かせるだけで他になにもない力よりも、いざという時自分よりも強い力を持つゆうれいによって身を守れるというのがどんなに心強いことか。

それらを全て仗助に話した。
自分のできることをよく考えて動けば、もっとすごいことだってできると。
おれの従弟はおれよりもとてもかしこい。ずる賢い。その頭とその能力を生かせばどんなことだってできるんだろう。

うらやましいという感情を包みかくさず、泣きながらその力をほめた。ほめちぎった。えらそうにお前にちゅうこくなんてしたけど、いまはそのときの自分がはずかしいぐらいだと。
だけど仗助はうぬぼれなかった。「そんなにほめられるとてれるっすよぉ」と言って困ったように笑った弟は、必ず人のためにこっそりと力を使っていくのだろうなと感じた。





結局はおれの問題だということは分かっている。
どんなにうらやましがっても、仗助の力が自分のものになるわけがない。
それだけじゃあない。使えるようになったきっかけも、どのように使ってしまったのかも、まるきりあいつとは違う。仗助が全部引っくるめて“だれよりも優しい能力”と言えるのなら、おれは“人を傷つけることができる能力”だからだ。
だからか、顔ではギャグみたいに笑えても、仗助の能力を見せてもらうたびに、何かどろどろとしたものが腹の底にたまっていくような感じがした。

「おい、アホの幸彦。まだこんなところで難しい顔をしていたのか、冷えるぞ」
背中を足で突かれる。露伴がこちらを見下ろして、いつもより深く眉を寄せていた。
『ごめん』
「………」

置きっぱなしだった荷物を持ち上げて持っていこうとする露伴を、旅行カバンをつかむことで止める。
なんだと言いたげなその幼なじみに、いつもよりも真面目くさった声でたのみごとをした。





『なあ、必殺技つくろうぜ』




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