君と未来を歩む | ナノ




だれよりもかっこいい人



仗助の力をあるていど見せてもらった後、おれは前に電話で伝えたことをもう一度そいつに話そうとした。超能力について、使うときの注意点などを。使えるようになったきっかけの話をせがまれたけれど、思い出したくもなかったのでダメだと言った。
おめーが大きくなったら話してやるさ。

 
だけど、仗助はとてもかしこい子だった。おれが言ったことを一言一句間違えず覚えていたのだ。
「そんなにしんぱいしなくても、兄ちゃん以外の人には見せないし、うっかりコイツ出しても見えないぜえ〜。

……チョッピリケンカでつかっちまったけどばれてねえしだいじょうぶだよ」
とてもずる賢いの間違いだった。
強めに頭をこづき、ポンパドールをわしゃわしゃと崩す。すると、あわてたようにおれの手を髪の毛の上からはずそうとしてきた。

「だ、だめだッ!それはおれのあい、あいでて、ん?」
『アイデンティティー?』
「それだぜ!」
手をつかんだままこちらをにらみつける仗助。あれ、もしかしてめっちゃ怒ってる?
『……ごめんなァ仗助、イカす髪型崩しちまってよ〜』
そう言えばおれの可愛い従弟は驚いたように目を見開いて、それから赤くなったほおを押さえ、つき出されたくちをぷいと横に向ける。あーカメラお父さんに借りてくるんだった。なんでこんな時に持ってないんだおれ。
「べ、べつによぉ〜っ、あやまってくれたし……兄ちゃんになら……」
かわいい。





『ところでよぉ〜っ、そのポンパってやっぱり前聞いた不良のあれだよな?』
洗面台からくしを持ってきて直している従弟の頭に視線を向ける。
仗助が高熱でうなされていた時、さっそうと現れ従弟と朋子さんを救ってくれたリーゼントの高校生。自分のほこりである学ランをズタズタにしてまで小さい子を助けようとするその義理堅さには間違いなくホレボレする。おれだってそーする。


だけど、こいつはおれの従弟でもあるわけでだな。
「ふりょーだけどかっけーんだぜ!マジにグレート!あ、グレートってのはグッドよりも上のえいごでな、」
『仗助』
周りの音がざっと引いていく。おれと、仗助の周りの音が。
「ど、うしたの?兄ちゃん」
『おれの……


  おれの方がそいつよりも格好いいじゃあないですかあァーーーーッ!!
   なんでそいつにばっか憧れるんですかァーーーッ!』
両目から今まで流したことのないほど熱く大量のなみだがあふれ出てくる。ちきしょう、おれだって格好いいって言ってもらいたいんだよ!特にこの目の前にいる弟にな!

「に、兄ちゃんも十分かっこいいっすよ?」
『でもそのリーゼント頭の方が格好いいんだろ……なにしろ命の恩人だし……』
仗助はなにも言えないようだった。分かってる、分かっているさ。これは兄ちゃんのわがままだということを!
「なにもなくこたあねーじゃねえかよぉ〜」
男泣きに泣いているおれの背中をぽんぽんたたかれる。このままだと格好悪いと思ったのですぐに泣き止んだ。スッキリした。


そんな感じで夏休みは終わりに近づいていった。



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