君と未来を歩む | ナノ




だれよりも優しい能力



仗助が退院した次の夏休み。つまり4年生の夏。
『………いくら東北っつっても、暑いもんは暑いなァ〜』
おれはM県S市、杜王町のとある家の前に一人で来ていた。





仗助から能力の正体が分かったと電話で言われたのは、今年の春休み。
ポンパドールがすっかり似合うようになったおれの従弟は、あわてた声でおれに杜王町まで来てほしいとお願いしてきた。おれもおれで仗助の超能力は気がかりだったので、夏休みの間とまりがけで様子を見ることにした。
露伴はどうしたかって?東京においてきた。いくら親友だからって、身内のことまでさらけだす気はない。けれど今回は従弟に会いに行くとは伝えてあるから、また怒られるなんてことはないだろう。きっと。

東方家のチャイムを鳴らす。すると、数秒もたたないうちにどたどたと足音が聞こえてきた。いやな予感がしたので二歩だけ下がると、勢いよくドアが開く。
「兄ちゃん、いらっしゃい!」
『おう仗助。ドアにはもうちょっと優しくな』
「へーきだぜぇ〜、なんたっておれのチョウノウリョクはスゲーもんよ!」
にんまりと笑う仗助は、おれが来たことを伝えるために家の奥へと走っていった。
……あいつ、本当におれがいったことを覚えているんだろうか。
「あら、幸彦くん。いらっしゃい」
『はい、夏休みの間よろしくお願いします』






『ウシッ!昼飯も食ったし、さっそくテメーの能力とやらを見せてもらおうじゃあねーか!』
「よしきた!」
音もなく、張り切る仗助に重なるように現れたハート野郎(と心の中では呼んでいる)は、足元に落ちていた石を拾い上げる。仗助やそいつの手には少し余るような、小さい岩といっても良いぐらいの大きさだ。ケガしないだろうか。

それを左の手のひらにのせ、もう一方の手では拳を握り………!?
『お おい!まさかっ!』

「ドオオオオォォォォッ!ラアアアアァァァァァァァッ!」
バグン!……石が真っ二つに割れる。なんて力だ。
「そしてぇ〜………“元通りに戻す!”」
割れたそれぞれのはへんが、無重力状態にでもなったかのようにふわりとうく。
まるでさっきのリプレイを見ているみたいだ。それらは一つの固まりになり、最後にはひびすらも残らないほどにピカピカの石になった。

「ど、どうかなァ兄ちゃん。おれの………」
めずらしく眉を下げ、不安そうに聞いてくる仗助。
決まっているだろ、こんなの、こんなの!


『……最ッ高の能力じゃあねーか……………ッ!』





いつ分かったかと聞くと、朋子さんに買ってもらったおもちゃをこわしてしまった時にハート野郎が殴って直したんだという。おれに電話したのもそのタイミングだそうだ。
『なんでも直せるのか?例えば……あそこの“さく”とか』
指差す方向には、じいちゃんがよっぱらってこわしてしまったさくがある。
「できるぜ!ドラァ!」
一瞬で仗助の後ろから飛び出してきた超能力のゆうれいが、さくの折れた部分に手を当てる。なるほど、殴らなくても直せるのか。
カンペキに元通りになったさくを近くでよく見てみる。

すごい、本当に……

じっくりとその部分をながめていると、つんつん服の端を引っ張られる感覚。振り向けばすごいだろうと言わんばかりに顔を赤らめて、にんまりしているそいつがいた。
『よしよし、すごい能力だな。オレとは全くちがっててウラヤマしいぜ』
なでてやれば恥ずかしそうに、照れたように笑う。かわいかった。


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