君と未来を歩む | ナノ




ばたばたしてても年は明ける



時計の針はもうすぐ12時45分。
テレビの中ではさっき発表された勝ち負けに喜んだりはくしゅしていた歌手達が、そろって蛍の光をがっしょうしている。

「今年は僕の勝ちだったな」
『なんでだよお、さいごの曲だってすンばらしくカッコ良かったじゃあねえかよ〜……』
「きみがどうかは関係ないさ。三ヶ日が終わったら駄菓子屋に直行だぞ」
得意そうに鼻をならす露伴を横目に、としこしそばをすする。









今日は1987年最後の日。
両方のお父さんは酒が入って寝こけているし、お母さんたちは今年あったことで一時間以上はおしゃべりしている。露伴の家の人たちといっしょに年をこすようになったのはいつからだっただろう。
それぐらいおれと露伴はずっといっしょにいるんだと思う。



「なあ幸彦。あ、食べてからで良い」
今長いめんと戦っていたというのに。もごもごと口の中のものを飲み込む。
『………ん、食ってるときに話しかけんなよなァー』
「はは」


「僕たちってさァ、今4年いっしょにいるよな」
うなずく。ん?おれたちが知り合ってからまだ4年なのか。けっこう短いな、と露伴を見れば、露伴も同じことに気づいたから話したみたいだ。
「そう、まだ4年だ。正直僕はこんな短い期間で、きみと気のおけない仲になっていることに驚いている」
『気のおけないってなんだ』
「とても仲良し」
なるほど。


「友情ってのは長い時間をかけて育むものだろ?一日二日で友情なんてのはアクション映画やマンガの中だけの話だ」
『だけどおれ達、それこそ会って3、4ヶ月で友達だったじゃあねェかよ』
「それだけ僕ときみとの相性が良いのかもしれない。こう見えて僕、友達は選ぶ方なんだよ」
ふだんの露伴からしてえりごのみがすぎるんじゃあないのかと思ったけれど、口はめんをすするのにいそがしかったのでだまっておく。

「幸彦が得たいの知れない力を手に入れた時だって僕はきみから離れていかなかった。それどころか親切にも“力”をコントロール特訓にまで付き合ってやっている」
上から目線ならぬ上から露伴。
「なんだと?」
聞こえていた。でもまあ露伴のいっている通りだ。なんでおれのそばにいてくれるんだコイツ。






『ごちそうさま。お母さん、これ』
「自分で台所に片しちゃいなさい、洗っておいてね」
やる気のない返事をしておいてからそばが入っていた器を持って立ち上がると、露伴もついてきた。さっきの話がまだ終わっていないらしい。

「つまる所僕はきみを手放したくないみたいだ。たとえ自分に目に見える利益がなくてもね」
スポンジにせんざいをつけながら露伴の話を聞く。こいつの話はちょっぴり長いから他の事をしながら聞くのが一番やりやすい(後でしっかり聞いていなかったことがばれるとめんどうなので、内容だけは覚えておくのがベスト)。

「ここまで来るとただの友達とは言えないだろ?参考までに聞きたいんだがきみは僕のこと、どんな風に思ってるんだ?」
『深いところ考えるのはメンドーだろ、おおみそかなんだし後にしろよ』
コシコシ皿をこすっていると、横から何かいらついている空気。やべえぜ、テキトーだったからおこらせちまった。

『あ、えーと、おれもだいたいおんなじ……か?』
ちらりと横を見る。よし、セーフみたいだ。
「そうか。なら問題はないね」
ずい、とおれのそばに右手が出される。






「僕の親友にならないか、幸彦。そうすれば収まりがつくと思うんだ」
となりの部屋のテレビではカウントダウンが始まっていた。
10、9、8、7、6、
『そうだなあ……』
5、4、3、2、1、
『断る理由もねえけどよ、こういうのって言葉に出さなくてもよぉ』


今年もよろしくの静かな声が聞こえた。

『おれたちは親友だぜ』




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