君と未来を歩む | ナノ




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「今日はみんなに新しいお友達を紹介しまーす!!」


いつもの朝の挨拶の中に、いつもと少し違った台詞。
「せんせー、おともだちってだーれー?」
急にざわざわとし始めた教室の中で、皆の気持ちを代弁したような甲高い女の子の声が響く。
だけどおれはちょっと違った。なぜなら、ちょっと前に見たあの「キシベさんとこの子」の事を思い出していたからだ。
彼は自分と同い年のようだった。確信している訳では無いが、直感的に"おともだち"がそいつであることを感じたような気がした。

「幸彦、なにわらってんの」
『え、おれわらってたァ?』
「うん、こーやって、ニタァ〜〜〜〜ッッて」

隣の席の奴が顔真似をしてきた。予想以上に気持ち悪くて面白い顔だったのでそいつと二人で笑いあった。

パン、パン!!
「はい、ちょっと静かにしててね。先生は新しいお友達を呼びに行きます」
文字通り先生の手によってしんと静まる教室。いや、まだ少しひそひそ話が聞こえてくる。かっこいい子がいいね、とこの組の中でも"おませさん"な女の子が言った。

がらがらがら、と扉を開ける音がして、ろはんくーんと言う先生の間延びした声。
そういえば昨日のあいつはどんな名前だったっけ。苗字しか分かんねえや。
先生と、もう一人の"新しいお友達"の上履きが擦れる音がする。おれの心臓が期待で大きく膨らんだ気がした。






「ハイッ、今日からこのおはな組の子になる、岸辺露伴君で〜〜〜〜〜すッ!!ほら、露伴君、ご挨拶は?」
「…………」





あいつだった。思わずガタッと席を立ち、ロハンくんをガン見してしまう。たぶん今のおれの表情は、期待と予想が当たった喜びとで満面の笑みになっている事だろう。
向こうも俺を見る。一瞬びっくりしたように目を丸くした後、すぐにこちらを睨んで来た。何が不満なのだろうか。

「ろ、露伴くーん、ご挨拶……」「……」「えっと……」
先生が困っている。ロハンくんは黙っている。俺はそれを立ったままじっと見つめている。
周りの子たちが俺たち三人を不思議そうに見ているのが分かった。
ここでピンと何かが来たおれは、いつも先生が言っているようにてっぺんまでピンと手を上げて話し出す。

『は〜〜〜いッ先生ッ!!いい!?おれいっていい!?』
「えっ幸彦くんどうしt」
『そいつ、おれんちのとなりにひっこしてきたやつで、キシベさんちのロハンくん!!』
「それさっきせんせいいってたよな」

隣のやつが突っ込んできたことは無視する。
『めっちゃだまってるけどよろしくだってさ!!ねッロハンくん!!』
「ぼ、僕はそんなこと、」
『すっげーッかっこいいこえしてんのな!!ヨロシクな!!ロハンくん!!』
「え、と、あの、」

先生とロハンくんが何やら狼狽えているような気がしたが、おれの声につられたのか周りの子たちも次々に宜しくの声をかける。

「…………よ、ろしく、おねがいします」

俯いてぼそぼそと呟かれた音は、しっかりとおれの耳に入って来た。
おれはにっかりと笑みを返し、満足したので自分の席に座る。





ハッとした後呆れたような溜息をついた先生は、ロハンくんの席を伝えた後におれに席を立つなと注意してきた。
良いじゃないか別に、おれのおかげでシンとならなかったことに感謝して欲しい。
そんな思いも込めてふんぞり返って座っていたら、隣のやつともう片方の隣のやつに頭をはたかれた。


空いていた俺の左隣、新しく其処に座ったキシベさんちの子は、真っ赤になった顔で悔しそうにおれを殴った手を握りしめていた。






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隣の席の露伴君を気に入った主人公。
これから主人公の能天気っぷりに振り回されていくことでしょう。Amen(ドンマイ).





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