君と未来を歩む | ナノ




きみは特別?



前回までのあらすじ。仗助のそばになんかいた。










仗助も力を持っていることを知ったので、お母さん達をせっとくして冬休みの間は朋子さんの家、つまりは仗助の家にとまることにしたのだった。冬休みのしゅくだいはきちんとやった。
ギリギリまではいたんだけど、けっきょくおれの冬休みが終わるのと、年が変わるまでに仗助がびょういんから出ることはなかった。
さすがに40日以上もねつがつづくといとこもつらそうだったけれど、そのたびにかんごふさんやおれがタオルを変えたり氷を変えたりした。冷えたタオルを乗せたとき、ほっとしたようにまゆのシワが無くなるのを見てほっとしたのはだれにもナイショだ。


《ッ!、ッ!》
たまにあのピンクの子がかってに出てきて、おれにあそぼうと言ってきた。だけどそのたびに仗助がくるしそうにもがくので、ちょっと悪いけれど“めいれい”でもどってもらった。このめいれいってのは力にも……ややこしいな、力のゆうれい?にも使えるのかとちょっとした発見だった。









《それで、今日退院したのよ。本当に良かった……》
『そうなんですか!やった!』
《ありがとうね、冬休み潰してまで仗助に会いに来てくれて。それに看護婦さんの仕事も手伝ってくれたんでしょう?偉いわ!》
『まあ、うん』
本当はかんごふさんには手伝うのを断られていたんだけれど、必死でおねがいしたり“おねがい”って名前の“めいれい”してやっとさせてもらった。というのは露伴にはだまっておこう。またおこられる。


《え、何?………そう。ちゃんとお礼言うのよ。幸彦くん、仗助に代わるわ》
『うん』
朋子さんの足音が聞こえてすぐにかみの毛がこすれる音が聞こえる。にゅういんしている間にずいぶんとのびたものな、と思い出して少ししんぞうの辺りがじんとなる。仗助は生きてる。

《にいちゃん、げんき?あ、あけましておめでとう》
『おめでとう。元気だぜえ〜、おめーは?どっか悪いところとか無いか?』
《だいじょうぶだぜ!んとな、その、びょーいんではありがとな!》
おれのいとこがこんなにもかわいい。

『おう、おう。まだねつ下がってすぐなんだから、良い子にしてんだぞ』
《うん、分かってる。………あのな、》
周りを気にするように、急にひそひそとした声が聞こえる。みなまで言わなくても、だいたいあの事だろう。
『それはちょうのうりょくってやつだぜ。おれには人っぽい何かはいないけど、仗助のそいつは多分おれとお前以外のだれにも見えない』

実は、冬休みが終わる最後の最後まで仗助にはなにも話さなかった。それよりも高いねつの方がゆうせんしなくてはいけない問題で、つきっきりでかんびょうするうちに時間の方が早くなくなってしまったからだ。仗助の方もあのピンク色がなにもしてこないと分かると深くねむってしまったのだ。

びょういんでいくらあのピンクの子があばれようと、だれも見えていなかった。つまり、そういう“力”を持っている人にしか見えないんだと思う。

仗助はテレビアニメもマンガもあまり読まないタチだったので、そもそもちょうのうりょくとは何かという所から教えなくてはならなかった。だいたい10分かけてくわしくせつめいすれば、従弟は自分にとくべつな力ができたことによろこんでコーフンしていた。


もう一つ、教えなくてはならないことがある。
じゅんびをするといつものあの音がのどからもれ出してきて、電話の向こうがわからはっとしたような声が聞こえた。
『いいか、仗助。お前にはひどい話だと思うけれど、ちゃあんと聞かないともっとひどいことが起こる。………

               《聞け》』

のどのざりざりを吐くように言葉を出す。仗助が固まった「けはいがした」。
『今の、分かったな?おれは他の人をめいれいであやつることができる。これはあんじゅうろうってヤツにやられた時に生まれた』
何か言いたそうだったので一度めいれいをはずす。最近はとっくんのおかげで自由にめいれいをしたり取り消したりできるようになった。
《あんじゅうろうって?》
『お前がもっと大人になったらぜんぶはなす。続けるぞ。
  おれは、これで生き物をころしたことがある』




ひゅ、と音がじゅわきから聞こえる。ああ、こわがってる。
『うぬぼれていたのかもしれない。とつぜんアニメやマンガみたいな“力”がポンと手に入ってきたんだ。おれは他人をどんな風にもできる、この世でたった一人のちょうのうりょくしゃだってさ』

『だけど生きているものは死んじまったらもどんねーんだ、おれがいくらめいれいしても、だぜ』

『いいな仗助、その子がどんな力を持っていたとしても、ぜったいに見せびらかすなよ!他のヤツに使うな!使うんだったらよく考えて使え!
そして……その力を、周りを傷つけるためには使うな。やくそくだ』
《………》
『どうした?………あっ』
あわててめいれいを外せば、大きくいきを吸う音が聞こえた。こきゅうまで止めて聞いてたのか。



『だ、大丈夫か?すまん、どうしてもお前には聞いてもらわなくちゃあいけないんだ』
「けほっ、う、うん。分かってる」
いきを吸って、はいて。長いためいきのような音が聞こえた後、みょうにきりっとしたような声で、おれのいとこはせんげんしたのだった。

《だいじょうぶだぜ、にいちゃん。おれはぜったいにこいつを……“じぶんのためだけにはつかわねえ”》
まだ生まれてから四年しかたってないだなんて思えなかった。この男の子がまだようちえんに通っておゆうぎしてあそんでいるやつだなんて。
おれのいとこながらかっこいいぜちくしょう!



『………そうか。ならおれも安心だ。あ、どんな力か分かったら教えてくれ』
「うん!いっしょにまもってこうぜ、みんなを」
『ヒーローみたいだな!いいぜ、まかせとけ!』
そこでお母さんの声がかかってきて、話は終わった。
まさかあんなに仗助がカッコいいやつになっているだなんて思いもしなかった。ねつでたおれていたときに、何かきっかけでもあったんだろうか。あいつならきっと優しい力でみんなを守るにちがいない。

それとこの事は露伴には言わないでおこう。おれと仗助だけのひみつだ。




次の週ポンパ頭になった仗助の写真が送られてきて、不良になってる従弟のかみがたになんだかふくざつな気持ちになった。




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