君と未来を歩む | ナノ




どうあがいても



やってしまった!ねこをころしてしまった!
まさか本当に死んでしまうなんて思わなかった!
いや、も今はこのねこをどうにかしなければ!しかしたらまだ助かるんじゃあないのか?

手始めにもう一度おれの「めいれい」をためす。
『《起きろ》ッ!《生き返れ》!《しんぞうを動かせ》!ダメだきかない!』
そうだ、びょういんでしんぞうマッサージとかはどうだ!?動物びょういんってこの近くにあっただろうか?
いや、動物にしんぞうマッサージは果たしてできるんだろうか?

「どうしたんだ!?」
急なさけび声に顔を上げてみれば、露伴が息を切らして立っていた。
『ね、ねこがッ!このねこのしんぞうが止まっちゃってるんだ!』
「何だって?」
露伴は数びょうぐらい何かを考えるようなそぶりをして、おれに動物びょういんへのれんらくをするよう言った。ここから一番近いこうしゅう電話はたしか………
『あそこだっ!』
がちゃりと重い緑色のそれを持ち上げて、10円を入れようと………ま、待てよ?

『おれァ動物びょういんのれんらく先なんて知らねえよぉぉ〜〜ッ!?』
どうする、置いてあるハローページのかん字はまだ読めないのが多い。それに、こんなぶあつい電話ちょうから調べ出しているうちにまちがいなく!あのねこは死んでしまう!



「幸彦、まだ電話をかけていないのか!?」
『ワカンネーんだよっ どうやったらアイツを助けてやれんのか………ろ、はん?』
なにをしているんだ、と言ってやりたかった。ねこにあんな「めいれい」をしてしまったおれが言えたことじゃあないが。露伴は露伴でねこを見ていてくれているんだと思っていたのに。

そいつの手の中には、動かないなにかがだらんとたれさがっていた。
「もう、間に合わないんだよ」
そいつの目からポタリ、と水がこぼれる。
「やってしまったんだな、幸彦」











『いつ気づいた』
ねこをおれの家のうらにわにうめて、二人で手を合わせる。手で穴をほって土をかぶせただけのみすぼらしいおはかだったけれど、ころしたやつがころされたやつのはかを作るってのはいけないことなんだろうか。
「きみが僕に“もう大丈夫”と言ったときからうたがってはいた」
『けっこう最初からじゃあねえか』
そこにお母さんのガーデニング用品からくすねた花のたねをまく。こいつは育ったら毎年たねをばらまいてふえるんだって露伴が言っていたから、おれは毎年この事をわすれられなくなるだろう。

「幸彦」
『なにさ』
さいごにじょうろの水をかけて終わり。

よごれてしまったおれの手を、そいつはそっとにぎった。

「僕がいるよ」

『………マジに言ってんのかよ、それよお』
「きみのこと止められるのは僕しかいないだろう」
『ずいぶんじしんがあるのな』
ぎゅうと強く手がにぎられて、そちらへと顔を上げる。
わりと近くにいたそいつはおれの方に頭をよせてきたので、ゴツンとひたいを合わせる。二人分ののこったなみだがおれたちの手にかかって、あたたかいなと思った。


「きみと僕とのやくそくだ。決めたね」
『お前本当にゴーインだなあ』
どうあがいてもぬぐえないなら、二人でそこをぬりつぶす。






prevnext




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -