君と未来を歩む | ナノ




露伴とおれのひみつのとっくん



次の日から、おれと露伴の“とっくん”が始まった。

「……………バカ、アホ、まぬけ、考え無し、のうたりん、モンキー、パープリン、スカタン、鳥頭『ぐああああああああああ!!』まだ35個目だぜ」
『だからってよお、てめえのちょうはつにイライラしないなんてできっこねえーよ!』



○とっくん一つ目 “精神たんれん”


露伴と話し合って決めたルール。それは、「めいれいはよほどの事がない限り人に向けない」「ころさない」「使うならうまく使え」「こっちに命のキケンがあるならようしゃはするな」だった。

そしてどうやらこの力、おれが心を強く持っていればきちんと使えるかもしれない(とれいせいに判断した露伴は言っていた)。そこでこの悪口ラッシュである。
何かのひょうしにうっかり使ってしまわないように、らしい。
「きみが興味本意で「めいれい」を使わなければあんなことにはならなかったんだからな?ン?分かっているよなあ?」
『………はい』
「聞こえないねっ!」
毎日二人だけのときにやっているんだけれど、露伴は昔から口だけは達者なのでいつもとちゅうでいかりバクハツしてしまう。さらにこの時間の時の露伴はこれ以上ないってぐらいむかつく顔をしているから、未だにもくひょうたっせいはしていないのだった。






○とっくん二つ目 “体力づくり”


「あとワンセット!いち、に、さん、」
『よ〜……ん、ごォ〜………ろくぅ〜〜〜、きっつ…………い…………』
悪口ラッシュが終わったら、次は運動する。と言ってもオリンピック選手やすごうでアスリートのような運動なんてできっこないから、図書館で読んだかんたんそうなものをあの露伴が(あの人を見下してるような絵かきバカがだぜ!?)まとめてくれたものをやっている。
「じゅう、と。よし10分休けい!さすがに小学二年生ではげしいのは無理だしな」
『今も……十分……………ゴホッ』
「疲れているきみも中々ケッサクだったぜ」
『チ【規制音】やろうめ』
「何だと?」





○とっくん三つ目 “語い力アップ”


かりかりかりかり、とえんぴつの音だけが聞こえる。
『露伴、これどうやるんだっけ』
「かけるとわるが先、たすひくは後、かっこは最優先」
分かったと答えてまたかくことに集中する。

『………これふつうにべんきょうじゃあダメ?やってること算数だし』
「特訓って言ったらきみちょっとわくわくするだろ」
わりとお見通しだった。ちくしょう。






○とっくん四つ目 “力のけんきゅう”


とっくん三つ目(と言う名のしゅくだい)が全部終わったら、いよいよこの“力”のけんきゅうだ。
これは力のコントロールやのうりょくアップもかねていて、内容はこんなかんじだ。


「………じゃあ、今度はこのコップに命令してみてくれ」
コトリと音をたてて小さいつくえに置かれるガラスのコップ。息を深く、ひとつしてゆっくりと目を開ければ、のどの辺りがざらざらとしてくる。そして変なパチ、パチという音をのどからはき出す。
『………《われろ》ッ!』

『ダメだこりゃあ、ひびすら入ってねーよー』
「無生物じゃあダメなのだろうか?」
『聞く耳持ってないからな』
今日のじっけんは“コップなどの生き物でないものに力は使えるか”、けっかは今の通りだ。
これまでのけんきゅうでは、「使う前に必ずのどがざらざらする」、「生き物にしか使えない」、などが分かっている。

この四つのとっくんは、どちらかがいそがしい日を無しとして一週間に四、五日はやっている。おかげでケンカするとき相手をけがさせずに済んでいるし、しゅくだいもきちんとできている。

露伴はスケッチブックに何か書きこんでいるとちゅうだ。多分今日のおれのけっかを細かく書いているんだろう。りちぎなやつだ…………おれもあるていど分かってきたらかくにんさせてもらおう。
「きみ、ちゃんと自分でも 何が出来て何ができないかって………覚えているよなあ?」
『お、覚えてる!おぼえてるからそんなにらむなよっコエェ!』
今度からはおれもきちんと覚えておこう。








そういえば、とっくんを始めて三ヶ月ぐらいたったころにこんなことがあった。
『ところでさ、なんでお前はおれに付き合ってくれるんだ?』
おれの家でくつろいでるときに、ふと気になったことを聞いた。けんきゅうまでおわらせて真けんにメモを取っていたおれの片われは、最後まで書き終えてからこっちを向いた。

「……き、きみが僕のおんじんだから?

おいそこ、心底驚きましたって顔やめろ」
『おれお前に何かしたっけ』
「……きみはほんとうにばかだなあ」
いつもそういう感じでコケにしてくるくせによ、とは言わないでおいた。露伴も人をほめたくなることぐらいあるだろう。でもおんじんって言われるほど何かやったっけ?

「まあ、幼稚園からきみのことを見ているわけだし、今さら信じないとか協力しないってのもおかしな話だろ。未来の同居人でもあるわけだし」
『それ、まだあきらめてなかったのかよ』
「当然」
その時はそこで終わったんだけれど、何かはぐらかされているような気がしてならなかった。でもそいつの顔を見ていると、何か……今は答えてくれなさそうな予感がしたのであきらめたのだった。
『ん、そろそろおれ帰るぜえ』
「ああ、またな」




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「………正しい人、か」
「過去の自分に感謝しろ、幸彦。僕はきみのおかげで……」




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