君と未来を歩む | ナノ




露伴のなやみそうだん



「足りない」
図書かんでまたも露伴のスケッチに付き合っていたある日のこと。
プールびらきももうはじまっていて、クーラーが無いから開けられたまどからせみの歌がうるさく聞こえる。




『足りないってなにがさ』
「絵が足りない」
今日露伴がうつしていたのはりくのいきものずかんで、たしか前に露伴がウサギ小屋にしのび込んだ事件のときにはまださいしょのページだったはずだ。まだ一か月しかたってないはずだが………
『まさかとは思うけどよお〜、一か月でそこにのってるやつ全部かいたとか「そうだが文句でも?」ええ……』

そんなはずはない、とまず思った。だって露伴がここに通いつめている間、おれが一番そばにいたのにどんどん減っていくのこりページに気がつかないなんて。

「いや、きみがここに来るのって一週間に一、二回ぐらいじゃあないか」
『そうだっけ?たしか昨日はナナミとアキオとあそんで、その前はタイチとイイダくんとでファミコン、その前はクラスのみんなでやきゅうして……あれ、この前露伴といっしょに帰ったのいつだっけ』
「先週の土曜日」
『アレェ〜!?もうそんなにたってんの!?』
それならずかんをいつのまにか全部うつしきっていたことにもなっとくがいく。
だけど、一日にこいつはどれだけの絵をかいているんだろう。

『なあ、今までのスケッチブックって全部ある?』
「ああ、あるぜ。最後のページだけおわらせたら僕んち行くか」
そう言うと、露伴はかんまつふろくの“りくのいきものしんちょう比べ”を写しはじめた。


あれ、こいつまたちょっとかくの速くなってないか?





露伴の家のスケッチブックには左はしにていねいに、一ページずつ日付がかかれていた。そこから図書館に通いはじめた日にちを見つけ、ぱらぱらとめくって一日にかいた分ずつ数えていく。4月の20日に一ページ分びっしりと紙を黒くうめて、21日も同じだけ、22日は……
数えるだけじゃなく、同時に露伴にそのページ数をかいていってもらった。
『……6月18日が15ページ、19日が16ページ………おい露伴、これって』
「分かっているさ」


2ヶ月でありえないぐらいにかいたページ数が増えている。今までいつも閉館時間には家に帰って宿題をしていると聞いたからつまり、その分露伴のかくスピードがきゅうげきに速くなっていたということだ。さい後の日である今日は19ページ。メモを取り終わった露伴は、こうふんした顔でこちらを向いた。

「自分でもビックリだ!ホントにこんな力が僕に!?すごいぞ、これからもっとかけば僕は更に……ならもっとしりょうを集めなくちゃあいけないな、ずかんだけじゃなく………本物も……味…………」
ぶつぶつとつぶやきはじめたのをガッと肩をつかんでキャンセルする。正直、この時おれはまだこうふんのまっさいちゅうだった。
『これって将来絵かきになったときスゲー楽できるんじゃあねえか?ほら、よくタイサク?は完成させるのにウン十年もかかるって言うだろ。もっと速くかけるようになりゃあよ、残った時間はたくさんの金でうはうはだぜ!?』


「……きみホントにばかだよな!」
ぽかんと口を開けたあと、めっちゃ力の抜けた声でそいつは笑った。


ちょっとだけ露伴のことがうらやましいと思ったのは、こいつには言わないことにした。



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