君と未来を歩む | ナノ




出会い



昨日か一昨日か、隣の家にトラックが停まっていたのを見た。
荷物をせっせと運び込む大人が数人、それを見ている子供が一人。
体の割にでかいスケッチブックを抱えて、段ボールの山が積み上げられていくのを無表情で見ていたのを、今でも覚えている。

『おかーさーん』
自分の家の門の影から見ていたおれは、開け放たれていた玄関の扉に向かって声を張り上げた。

「なに?お母さん今忙しいのよ」
『なにあれー』
「えー?……ああ、お隣の家に越してきたみたいよ。岸辺さん……だったかしら」
『ふーん』

買い物袋を持って出てきたおかあさんにそう言われて、おれはまた視線を隣の家の方に向けた。
ぞろぞろと大きい車の後ろから荷物が運ばれていく。あ、あれはソファか。段ボールの中に入らなかったのかな。おれんちのソファ、昨日上で跳ねすぎてちょっとギシギシいってるんだよな。

「ほら、あまり見てると失礼でしょ。お買い物行くわよ」
『おれアイスほしい』
「今日は買いません。夕飯食べられなくなっちゃうじゃないの」
『きょうのごはんなに?』
「お魚とおひたし、あと向かいの広瀬さんから貰ったお漬物にご飯よ」
『にほんしょく!!おれしってる!!さんまのしおやき!!』
「はいはい」

しっおっやきー♪しっおっやきー♪と歩く度に大げさに体を揺らしながら歩くおれを、おかあさんは呆れたような声と共にむんずと捕まえ、それから手を繋いでスーパーまでの道を歩いていく。

ふと振り返ると、キシベさんの家の子供がこちらを向いているのが見えた。

(……こわいのかな)

その眼は、見知らぬ環境に、見知らぬ人に、見知らぬ光景に怯える眼だった。




お魚はホッケだった。サンマも美味しいけどこっちも美味しかった。






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時系列的に鈴美ちゃんの殺害事件後、東京に引っ越してきた時。
殺害現場は直接見ていないが、逃がされた時の恐怖だけは覚えている露伴。
そんなことは露知らず、毎日の遊びと毎日の食事のことに精いっぱいな主人公。
初っ端から能天気さがふんだんに表れています。




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