君と未来を歩む | ナノ




口八丁より手八丁



「ずいぶんとらんぼうなやり方じゃあないか」

足下のじゃりを音がなるぐらいにふみつけて、露伴はおれの目の前に立ちはだかる。


『なんとでもいえ』

おれはそのまん前でこぶしをにぎり、相手をにらみつけた。





時間はおひるやすみ。ばしょはようちえんの庭。たいむりみっとは先生が来るまで。ナナたちや女の子、年長さんや年少さんまでもがおれたちのことを不安そうにみている。

これからやるのは男どうしのぶつかり合い、こぶしとこぶしのかたり合い。おとうさんのマンガでべんきょうした、一番のなかなおりの方法。





「……なにもかも、全部きみが悪いんだ」
にらみあったまま、ぽつりと落ちた露伴のことば。

「きみさえいなければ、僕はだれとも仲良くならずにすんだんだ。だってそっちのほうが楽じゃないか。スケッチブック見られただけでこんなにイライラしなくてすむ」
……?だれにも見られたくなかったからおこったのではないのか。じゃあなんでだろう。

ぺらぺらとしゃべりながら、一歩一歩近づいてくる露伴。
「僕にちょっかいかけなきゃ良かったんだ。友達なんていらなかった。僕がいやがってたのに、無理やりきみが………くそっ



   全部お前のせいだ、 西之谷!!」

  ごっ とおもい音がおれの左から聞こえたと思うと、自分のからだがうき上がったような。のどがひりついたようで、地面に落ちたときの小さな石がいたくて、露伴を見ればぜいぜいと息をしていた。


『こ………のッ!!』
露伴のあしに飛びかかってがっしりつかみ、力で横におしたおす。あっちのアタマからすごい音がしたけどおたがいさまだ。

「………ぁ………う」
『おれだっておまえみたいな性格わるいのと友達になんかなりたくなかったぜバ〜〜〜〜カッ!!オタンコ!!!』
ずりずりとからだを露伴の上にもっていって、顔が見えたところでパンチ。露伴のくちからなにか白いものが飛んでいった。すかさずスモックのむねをつかんで引き上げる。

「い゛いィッ!??」
『なんでおれがてめえなんかの友達になったかってなァ、わかんねーだろ〜〜な〜〜〜ッ』

『いけすかない男だけどよー、だれかを思って泣けるんだなって知っちまったらよー?
そんなんさ、キライになんかなれねーじゃねえか。なあ露伴』
「なんの、はなし『それとな、』」
まだ話は終わってない。次のでとりあえずさいごなんだ、そのうるさい口をもうちょい閉じとけ。

『いつでも自分のしんじたことを曲げないとこがすきで、ただしいやつだと思ってる。
だからスケッチブック見たおれが悪かった、ごめんな露伴』
それから、おれの大切なともだちににっこりと笑った。




「ふざ、けるなッ!!」
かみの毛をつかまれてからの右にビンタ。ばしん、ばしんと何回も続けて。

『う!、ぐ!?』
「僕が”正しい”だってェ!!?そんなはずがねェんだよッ!!」
露伴の目からながれるなみだは、痛さのせいだけじゃない。くやしそうな、さみしそうな、

(はじめておまえを見たときの目だ)
すこしぼやけた目で、おれの前のそれと、あのときのこどもとを今いっしょに見た気がした。



「それはじじつから答えをはじき出しただけのこと!!それがいつも正しいなんて限らない!!だって、だって僕は………

    

      自分が生きるためだけにッ!!だいじなひとを死なせたんだ!!!」


そして、またばしんとほおを叩かれた。

そんなでかいこえだせるのか。耳がきーんってなったじゃないか。





………





露伴はないていた。おれをさんざんになぐってた手を、さっきからすごいたれてるはな水をふくのに使っていた。ティッシュをとってやったらふり切れるぐらいにそっぽ向いた。なぜだ。

露伴が泣き出した後、すぐに先生がかけつけてきてタイムリミット。
顔がぼっこぼこのおれと、あたまをうって歯をいっこどっかやった露伴はほけんしつに連れていかれた。もうすぐどっちものおかあさんが来るみたいだ。おこられる。
「なんであんな事したの!!」とおこる先生に『おとこどうしのひみつだ』と言ったらため息をつかれた。なぜだ。ちなみに同じことを露伴にも聞いてたけど、あいつはなきじゃくって口をぎゅっとしてた。



ほけんしつの先生とようこ先生は、おかあさん達を門のところまでむかえに行くらしい。露伴はおれにまかせろって言ったらすごくびみょうな顔をされた。なぜだ……あれもしかしてそんなにしんようない?


「……ッ西之谷 」
『なんだよ』
うつむいたまま話しかけてきた。ときどきひぐっ、とか聞こえるからまだかんぺきになき止んだわけじゃないな。



「…………ぼくのことっ、を、 どう、おもう」
『めっちゃいやなやつだけどいいやつ』
「そうっ、じゃない………そうじゃない、んだ。ぼくのさっきの、きいたろ」
『うん』
自分のせいで、たいせつなひと………たぶん”れいみおねえちゃん”かな、その人が死んでしまったと。自分のなかでひとつひとつがつながっていく。


「ケーベツ、したか? ッかわいそうか?  それと、も」


 ………ひとごろし?


そいつの声がぶるぶるとふるえている。なみだとはな水でぐちゃぐちゃの顔をちょっとだけ上げて、こっちを見た。

(まただ、またあの目だ)
おびえていたのは周りにだけじゃなくて。そうか、こいつがこわがってたのは、



『そのひと、露伴がころしたのか?ほーちょーとかでグザァァーッて?』
「ち、ちがう、けど」
『ならいいよ。なあ、おれたちってまだ友達?』
「ともだち………いいのか?ぼく、」
めんどうだからそいつをぎゅっとだきしめた。こいつむだな頭のよさだし、なに言ってもきかなそうだから。
たぶんおれのスモック、はな水だらけだ。くびとか頭のよこもなんかつめたい。けど、露伴のせなかをやさしくたたく。だいじょうぶ。なんか分からんがだいじょうぶ。りゆうとかつけても口じゃあ勝てないんだから、せめてこれでつたわればいいな。



今度はかたがあったかくなって、またなんかぬれてきた。





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