君と未来を歩む | ナノ




露伴くんのたいせつな



露伴はいつもスケッチブックを持っている。

たまにモデルしてくれとおねがいされるので色んなポーズをしているのだが、でき上がった絵を見せてくれと言っても、一度もその中身を見せてくれたことはない。
最近はおれだけじゃなくナナやアキともお絵かきをしている(かくのは露伴でナナたちはポーズ)。もちろんそいつらにもかいた絵を見られたことはないらしい。


ちょっと気になったから、露伴がトイレにいっているスキを見はからってスケッチブックの中を見てやった。


(これがナナ、これがおれか。絵の下になまえかいてるから分かりやすいな………)

(あ、てんとう虫。そういやこの前のいも虫のときはひどいことしちゃったなあ)

(じゃんぐるじむ。ぶらんこ。ようこ先生も。あ、うさぎごやの絵だ。こんどみんなでなでに行こうかな)


ぱらり、ぱらりとめくっていく。どれもクレヨンのいろんな色でかかれていて、見ていて楽しい気持ちになってくる。今思ったけど露伴って絵がとても上手なんだな。


夢中になってページをめくっている内に、とうとう最後まできてしまった。まだ露伴は来ていない。友達と会って遊びにでも行ったんだろうか。



(あ、この絵………)

誰だろう、と最初に感じた。
ふんわりした髪の毛、前はカチューシャでとめられている。
くびわのようなものをしていて、短いワンピースにはふたつのリボン。
腕にもふといリボンが巻かれていて、全体的にピンク色。

絵の中の背がたかい女の子は、こっちを向いてにっこりしていた。




「オイッ西之谷!!」
はじかれたように見上げれば、あせったようなおこったような顔の露伴。

「見るなッていつも言ってるだろう!返せよ!」
『わ、わかった。ごめん』

あわててそれをさしだせば、らんぼうにむしりとられる。今おれが見ていたページを見ると、はっとしておれをにらみ付けた。


「〜〜〜〜ッいくらきみといっても、やって良いことと悪いことぐらい分かるだろう!!」
『だから勝手に見てごめんなって』
「もう二度と見るな!!……もしまた同じことがあったら、僕はきみと一生ゼッコーだ」


それだけいって、どすどす足音をたてて行ってしまった。


やってしまった。きっとあの女の子の絵は、露伴にとってすごく大事なものなんだ。だから誰にもスケッチブックを見せないようにしていたんだろう。

明日からおれのおとなりさんは、いっしょにあそんでくれるかな。


もう何もかんがえずにうごくのは止めようとか、すごくわるいことをしてしまったなとか、そんなんじゃなくて。




ぐちゃぐちゃな頭のなかにまっさきに出てくるわがままに、おれは。




『………ちくしょうッ』



おれは、なんていやなやつなんだ。



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(忘れたくないたいせつな、)





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